セッション情報 |
ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)
自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題
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タイトル |
肝W9-3:急性肝炎期自己免疫性肝炎の長期経過と予後
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演者 |
多田 藤政(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学) |
共同演者 |
阿部 雅則(愛媛大大学院・消化器・内分泌・代謝内科学), 恩地 森一(済生会今治病院) |
抄録 |
【目的】演者らは自己免疫性肝炎(AIH)のうち組織学的に急性肝炎像を示す急性肝炎期の症例は診断困難であり,急性肝不全に移行すると予後不良となる症例があることを報告してきた.しかし,急性肝炎期AIHでステロイド治療により寛解導入が可能であった症例の経過と長期予後は明らかになっていない.今回,急性肝炎期AIHの長期経過と予後を解析した.【方法】当院でステロイド投与前に肝生検を施行し急性肝炎像を呈していた急性肝炎期AIH症例のうち死亡あるいは肝移植した症例を除外し,診断後に12カ月以上経過観察が可能であった21例を今回の解析対象とした.診断時平均年齢は56.1±14.5歳(16―74),男女比は2:19,平均観察期間は120.6か月(20―243).ステロイド治療で寛解となり維持療法を行っている組織学的に慢性肝炎像を呈したAIHの62例と比較した.経過中の再燃は血清ALTが基準値上限の2倍以上の上昇と定義した.【成績】1)急性肝炎期AIH 21例の診断時データは,総ビリルビン 8.91±6.49mg/dl, AST 812±648IU/l, ALT 814±656IU/l, IgG 2023±526mg/dl, 抗核抗体陽性率(80倍以上)は33.3%.ステロイドに対する反応性は良好で,全例が寛解となった.ステロイドの初期治療量は40mg (57.1%)が多く, 維持量は5mg/日が最も多く(33%),全例が10mg未満であった.平均の維持投与量は5.3±2.3mgと慢性肝炎と差はなかった.2)ステロイド治療経過中の再燃は9例(42.9%)にみられ,慢性肝炎(32.3%)と差はなかった.3)患者の自己判断等の理由でステロイド治療中断を行った6例のうち3例では再燃があり,ステロイドの再投与が必要であった.4)経過中の肝疾患関連死,肝細胞癌の合併はみられなかった.【結論】急性肝炎期AIH例のうちステロイドで寛解に至った症例の経過および予後は慢性肝炎と差はみられなかった.急性肝炎期AIH例でも慢性肝炎例と同様にステロイドを中心とした適切な免疫抑制療法が必要である. |
索引用語 |
自己免疫性肝炎, 急性肝炎 |