抄録 |
【目的】自己免疫性肝炎に少なからず存在する非定型症例の病態と治療の反応性を解析し,定型例と比べ肝硬変への移行率や予後にいかなる相違がありどのような治療が有効であるかを検討する.【方法】2012年までの30年間に当院でAIHと診断された症例は192例存在する.このうち126例(66%)は,1999年の国際診断基準のscoringでdefiniteと診断され,残る66例(34%)がprobableであった.非定型例と判断した症例は,(1)急性発症症例18例.(2)AIH-PBCoverlap症例28例.AIHscoreでprobable以上でかつ抗ミトコンドリアM2抗体陽性例をその範疇とした.(3)HCV抗体陽性でいわゆるC+AIH症例.肝硬変への進展は,肝生検にてF4以上または血小板10万未満,食道静脈瘤の出現をもって診断した.【成績】(1)急性発症例においては,従来の報告と同様IgG値は低く,当初の組織学的検査でも診断がつかない症例が多く認められた.しかしこのような症例は早期に治療を行えばPSLの治療反応性は良好でありまた,中止可能症例が多くその後の再燃率も低かった(再燃率:慢性経過群vs急性発症群 71.4% vs 20%).また,急性発症例からは肝硬変への移行は未だ一例も観察されていない.(2)AIH-PBCoverlap症例の検討では,血液学的に診断された28例の症例も組織学的検索を行うことで病理学的にも診断しうる症例はわずかに3例となることが判明した.一方治療の面に於いてはPSL+UDCAの併用療法が奏功し,PSLの減量が可能であった.(3)C+AIH症例については,AIHscoreが低くγglob.や抗核抗体の絶対値も低い症例はHCV関連肝疾患の要素が強いと考え,IFN治療を積極的に行う事でSVRがえられた症例が62.5%(5/8)存在した.その一方で,自己免疫現象を惹起し肝障害を悪化させてしまう症例もある事も明らかとなった(12.5%,1/8).【結論】非定型症例の中には他の薬剤も併用することでPSLの減量が可能な症例が存在することが明らかとなった.C+AIH症例においては治療の選択を行う際の基準が未だ明確ではなくIL-28も含めた新たな指針の策定に向けた検討が必要と考える. |