セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 肝W9-7:

肝炎型原発性胆汁性肝硬変の臨床的特徴と治療戦略

演者 五十嵐 悠一(東京女子医大・消化器内科)
共同演者 谷合 麻紀子(東京女子医大・消化器内科), 橋本 悦子(東京女子医大・消化器内科)
抄録 【目的】原発性胆汁性肝硬変 (PBC)には,副腎皮質ステロイド(PSL)が著効する自己免疫性肝炎(AIH)症候合併例がある.これらは肝炎型PBC(肝炎型)等と呼ばれ,病態や治療戦略は未だ明らかでない.今回,当院の経験例から抽出したPSL必要例を肝炎型と設定し,治療経過や予後の検討,既存のAIH診断基準の検証を行った.【方法】厚労省の指針により診断し必要な検討項目を有したPBC321例を対象とした.後ろ向き検討から基準設定した肝炎型は,ウルソデオキシコール酸投与後ALTが基準の3倍以上で遷延,IgGが基準の1.1倍以上,抗核抗体か抗平滑筋抗体(SMA)陽性,肝組織検討例では中等度以上の実質炎かinterface hepatitis合併例とした.検討項目;1)肝炎型のPSL効果別検討(著効;ALT正常化,無効;それ以外) 2) 肝炎型に対する既存の診断基準(改訂版AIHスコア;改訂版, Paris criteria;Paris, 簡易スコア;簡易)の感度・特異度. 【成績】1)肝炎型29例(女性93%,年齢中央値51歳)は,他の292例と性・年齢(86%,58歳)に差がなかった.29例中18例はPBCと肝炎型が同時診断,異時性 11例(PBC先行9例)であった.29例中9例はPSL非投与で(理由;末期癌1例,超高齢4例,肝不全4例),投与20例は著効15例,無効5例で,無効例の特徴は多変量解析でALP高値,SMA陰性,gp210 陽性であった.予後は,PSL非投与例は生存1例(肝細胞癌治療後),肝移植2例,死亡6例(肝関連3例),有効例に肝病態進行例はなく,無効例は肝移植2例,肝関連死1例,組織学的病期進行2例であった.2)肝炎型に関する感度/特異度は,改訂版疑診66%/99%,確診10%/100%,Paris 66%/100%,簡易疑診97%/86%,確診100%/98%であった.【結語】肝炎型PBCのPSL無効例の特徴はALP高値,SMA陰性,gp210陽性であった.PSL有効例の予後は良好で,経過を厳重に観察しPSL適応を決定する.既存の診断基準では,簡易確診で感度・特異度が高かった.
索引用語 原発性胆汁性肝硬変, 自己免疫性肝炎