セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 肝W9-9:

PBCの臨床病型による定型例・非定型例の予後の検討

演者 勝見 智大(山形大・消化器内科)
共同演者 渡辺 久剛(山形大・消化器内科), 上野 義之(山形大・消化器内科)
抄録 【目的】PBCはCNSDCを特徴とする慢性胆汁うっ滞性肝疾患である.病因は未だ解明されておらず,臨床経過も緩徐に経過する症例や食道静脈瘤を来たす症例,肝不全に至る症例があり様々である.今回,厚労省難治性疾患克服研究事業「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班により作成されたPBC診療ガイドライン2012を受けて,当科で経験したPBC確定診断症例の臨床予後を病型別に検討した.【方法】1992年1月から2012年12月までに組織学的にPBCと確定診断された56症例(男性 12例,女性 44例,年齢58.8±10.7歳)を対象とした.症候別内訳はa-PBC 30例,s1-PBC 20例,s2-PBC 6例であった.無症候性に経過する緩徐進行型を定型例とし,早期に食道静脈瘤が出現する門脈圧亢進症型,黄疸を呈し早期に肝不全に至る肝不全型を非定型例と定義した.その各臨床病型と生命予後との関連性につき検討した.なお肝不全例で組織学的検討が不可能であった症例は厚労省診断基準に従い臨床的にPBCと診断した.【結果】観察期間は全例平均で10.2±6.2年.臨床病型毎の初診時生化学検査では,T-Bilが緩徐型で0.77±0.44 mg/dl,門亢症型で1.26±0.85 mg/dl,肝不全型で3.8±3.16 mg/dlと肝不全型が有意に高く(p<0.01),ALT値は緩徐型で43.3±33.3 IU/l,門亢症型で40.3±25.9 IU/l,肝不全型で88.7±77.2 IU/lと肝不全型が他2病型と比べ有意に高値であった(p<0.05).ALP値,γ-GTP値,IgM値,AMA-M2抗体値は病型間で差を認めなかった.肝発癌は門亢症型で1例認めたが,病型間での差はなかった.Kaplan-Meier法による10年生存率を算出したところ緩徐型で100%,門亢症型は62.5%,肝不全型は0%であった.定型例では100%,非定型例では45.6%であり臨床病型による予後に差が認められた(P<0.01).【結語】臨床病型別の予後を比較検討したところ,非定型例である門亢症型や肝不全型は生命予後が不良であった.非定型例の生命予後を規定する宿主因子やバイオマーカーとなりうる因子の検討が必要と思われる.
索引用語 PBC, 予後