セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 肝W9-10:

IgG4関連硬化性胆管炎と高齢発症原発性硬化性胆管炎の比較

演者 田中 篤(帝京大・内科)
共同演者 田妻 進(広島大病院・総合内科・総合診療科), 滝川 一(帝京大・内科)
抄録 【目的】本邦の原発性硬化性胆管炎(PSC)の診断時年齢分布は欧米と異なり二峰性である.われわれは2012年に硬化性胆管炎に関する全国調査を行ったが,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)と高齢発症PSCとは年齢層が重なっており,時にその鑑別は困難である.今回われわれは,全国調査の結果を基に,この両者の臨床像を比較した.【方法】2012年の全国調査では197例のPSCが集計された.年齢の中央値は47.7歳であり,それ以上を高齢PSCとして,IgG4-SCと診断時の臨床像,血液検査結果,合併症,予後を比較検討した.両群の比較にはカイ二乗検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は多重比較を考慮して0.001とした.【成績】IgG4-SCは43例,高齢PSCは98例であった.性別はそれぞれ男性/女性=33例/10例,49例/49例であり,IgG4-SCは有意に男性に多かった(P=0.002).年齢分布は同等で,いずれも65~70歳にピークがあった.診断時の症状に有意差はなく,無症状の症例がIgG4-SC 24例(56%),高齢PSC 54例(55%)であった.診断時血液所見では,IgG・IgG4がIgG4-SCで有意に高値(いずれもP<0.001)であり,IgG4-SCで高い傾向がみられたのが総蛋白(P=0.006),高齢PSCで高い傾向がみられたのがアルブミン(P=0.019)・IgA(P=0.037)・IgM(P=0.033)であった.ALPなどその他の生化学検査値に有意差はなく,自己抗体の出現頻度も同等であった.IBD・胆道癌合併は,高齢PSCにおいてそれぞれ12例,10例に認めたが,IgG4-SCにはいずれも認めなかった.今回は自己免疫膵炎非合併のIgG4-SCを集計したこともあり,病変部位は同等であった.副腎皮質ステロイド薬はIgG4-SCでは回答のあった36例中27例(75%)に,高齢PSCでも16例に投与されていた.死亡例はIgG4-SC・高齢PSCそれぞれ3例・19例で,有意差はないものの,高齢PSCで死亡が多かった.【結論】IgG4-SCは高齢PSCと比較して,男性に多く,IgG・IgG4が高値であり,IBD・胆道癌の合併はなく,予後が良好であるという特徴がみられた.
索引用語 原発性硬化性胆管炎, IgG4関連硬化性胆管炎