セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 消W9-11:

硬化性胆管炎の非定型例の検討

演者 近藤 啓(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
共同演者 内藤 格(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学), 中沢 貴宏(名古屋市立大大学院・消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】我々は原発性硬化性胆管炎(PSC)の中にステロイドに反応し,予後が良好な非定型例が存在することを報告し,近年,この非定型例はIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)として確立してきている.しかしながら未だ両者の中にも非定型例が存在するため,その特徴を明らかにするため検討を行った.【方法】当院ならび関連施設で経験したIgG4-SC75例,PSC46例を対象とし,非定型的な臨床経過,治療反応性を認めた症例および他の自己免疫性肝胆膵疾患合併例につき検討を行った.【成績】1)IgG4値非定型例:高IgG4血症を認めないIgG4-SCを12%(7/58),高IgG4値を認めるPSCを4%(2/27)に認めた.非定型IgG4-SC全例で胆管像での鑑別は可能であった.IgG4高値のPSC1例は44歳女性,IgG4値は204mg/dl,胆管像はPSC,肝および胆管生検では30個/HPFのIgG4陽性細胞を認めた.ステロイド治療を行うも効果を認めずPSCと診断した.2)ステロイド反応性非定型例:ステロイド治療を行ったIgG4-SC4%(2/50)で胆管像の改善を認めなかった.2例とも女性で年齢は68歳,52歳,IgG4値は146,55.6mg/dl.いずれも肝門部狭窄,膵内胆管狭窄,自己免疫性膵炎の合併を認めた.前者では診断5年後,後者では12年後にステロイド治療を開始するも改善を認めなかった.3)臨床経過非定型例:PSC12例が平均6.5年で肝不全となった.4年未満で早期に肝不全に移行した5例を非定型例,4年以上7例を定型例とすると,PSC診断時年齢は非定型例60歳,定型例33歳と有意に非定型例で高齢であった(p=0.042).4) 他の自己免疫性肝胆膵疾患合併例:PBCを合併したIgG4-SC1例を認めた.症例は45歳男性.IgG4値は968mg/dl,AMA(ELISA)133,胆管像は肝内胆管狭小化,自己免疫性膵炎合併あり.胆管管腔内超音波検査では胆管壁肥厚,肝生検では14個/HPFのIgG4陽性細胞および慢性非化膿性破壊性胆管炎に矛盾しない所見を認めた.ステロイド+UDCA治療で肝機能の改善を認めた.【結論】硬化性胆管炎の非定型例は存在するため,総合的な臨床診断および症例の蓄積が必要であると考えられた.
索引用語 硬化性胆管炎, 非定型例