セッション情報 ワークショップ9(肝臓学会・消化器病学会合同)

自己免疫性肝胆疾患の非定型例に対する対応と課題

タイトル 消W9-12:

膵内胆管狭窄を伴わないIgG4関連硬化性胆管炎の臨床像

演者 渡邉 貴之(信州大・消化器内科)
共同演者 新倉 則和(信州大・内視鏡センター), 川 茂幸(信州大総合健康安全センター)
抄録 【目的】IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)はIgG4関連疾患の胆管病変として近年疾患概念が確立され,2012年には診断基準も提唱された.IgG4-SCの多くは自己免疫性膵炎の膵頭部病変と合致し,それに関連する膵内胆管狭窄の存在はIgG4-SC診断の一助となる.しかし,膵内胆管病変を伴わないIgG4-SCはPSCや胆管癌との鑑別が非常に困難で,非典型例と考えられる.今回,膵内胆管病変を伴わないIgG4-SCの診断に有用な臨床的特徴を検討した.【対象・方法】1992年~2013年2月にIgG4-SC診断基準2012で診断された86例(男性67例・女性19例,年齢中央値66歳)を対象とし,膵外胆管のみの膵外胆管型,膵内および膵外胆管に病変を有する膵内+膵外胆管型,膵内胆管のみの膵内胆管型の3型に分類した.3群間で血清所見(IgG,IgG4他)・他臓器病変合併頻度を比較した.また自己免疫性膵炎の合併の有無でも比較検討し,膵外胆管型については臨床経過も検討した.【結果】86例中,膵外胆管型は13例,膵内+膵外胆管型は9例,膵内胆管型は64例であった.診断時に自己免疫性膵炎の合併を認めなかったのは10例で,いずれも膵外胆管型症例であった.3群間では各種血清マーカー値に有意差を認めなかったが,膵外胆管に病変を有するIgG4-SCと膵内胆管型IgG4-SCとの比較では,前者でIgG4は有意に低値であった.自己免疫性膵炎を合併しない膵外胆管型IgG4-SC 10例中8例の病変主座は肝門部であった.これらの臨床経過では肝門部胆管癌との鑑別が困難で,3例は胆汁細胞診がClass3以上で,外科的切除後に診断された.自己免疫性膵炎の合併を認めた膵外胆管型IgG4-SC 3例の臨床経過では,1例の胆管像は肝門部で途絶しており胆管癌が疑われた.複数回の生検で悪性所見はなく,ステロイド導入後に途絶部は速やかに改善した.【結論】膵外胆管型IgG4-SCを診断するにあたり,胆管癌との鑑別困難例が存在するため,血清所見・画像所見・組織所見・臨床経過を総合的に評価することが重要である.
索引用語 IgG4関連硬化性胆管炎, IgG4関連疾患