セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-1:

エンドサイトスコピーシステム(ECS)による食道病変の観察

演者 熊谷 洋一(埼玉医大総合医療センター・消化管・一般外科)
共同演者 川田 研郎(東京医歯大・食道・胃外科), 田久保 海誉(東京都老人総合研究所・老年病・がん研究グループ)
抄録 ECSは細胞を観察する目的で2003年に開発された超拡大内視鏡である.現在までに3種類のECSが試作された.1:プローブタイプ(生検鉗子孔を通るプローブ,1125倍,450倍),2:2眼式一体型(80倍の拡大内視鏡に450倍のECSを搭載),3:連続拡大ECS(連続して380倍(デジタルズームで600倍)まで拡大可能).トルイジンブルー,メチレンブルーなどの生体染色を必要とする.プローブタイプ,2眼式一体型では食道癌症例の検討を行った.69例71病巣を検討し,食道癌部で正常部と比較し著明な核密度の上昇と核異型が観察された.表在癌において内視鏡医は95.5%で癌細胞陽性と判定した.病理医の検討では,1125倍のECS観察で,98%で核密度の上昇と90%の症例で核異型を指摘し84%で生検省略可能と診断した.切除標本の基礎検討からECS画像を3typeに分類したType 0: ヨードで染色される.細胞密度の多寡は問わない.Type1: ヨード染色で不染もしくは淡染,ECSでは細胞密度が低く観察される扁平上皮細胞はN/C比が低く核異型のないもの.Type2:ヨード染色で不染もしくは淡染,ECSで細胞密度は高いが核異型がないもの.Type3:ヨード染色で不染であり,ECSで細胞密度が高く核異型が観察されるもの.連続拡大ECSでは380倍と従来より低倍率であるが細径化され,スクリーニングに使用可能で非癌病変の観察にも使用した.内視鏡医による癌,非癌の判別能はSensitivity: 100%, Specificity: 87.5%であったが,通常内視鏡観察所見をblindにした病理医の判定ではsensitivity: 94.9%, specificity: 50.0%であり食道炎,LGINの約2/3を悪性と判定した.非癌病変でも著明な核密度の上昇を示す症例が存在し,核異型の診断が必須となる.現在の380倍では核密度の情報が主で核異型の情報が少ないたであり,現在デジタルズームを用い600倍まで拡大し検討している.核異型を診断できる倍率の設定と機器の改良が今後の課題である.
索引用語 エンドサイトスコピーシステム, 食道癌