セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-3:

表在食道癌におけるNBI拡大診断と生検診断精度の比較

演者 長井 健悟(大阪府立成人病センター・消化管内科)
共同演者 石原 立(大阪府立成人病センター・消化管内科), 石黒 信吾(PCL大阪)
抄録 【背景】生検は治療前診断のGold standardとされているが,病変の一部を採取し行われる生検診断には自ずと限界がある.一方,NBIや拡大内視鏡の進歩により,内視鏡診断の精度は向上した.しかし内視鏡によるOptical biopsyが生検診断に匹敵する精度を有するかどうかは明らかにされていない.【方法】食道癌ハイリスク症例を対象に内視鏡検査を行い,食道内病変を主にNBI拡大観察し,上皮の茶色変化や血管変化をもとに,癌,非癌の診断を行う.その後ヨード染色を行い,6mm以上の不染部から生検を採取する.内視鏡診断と生検診断のいずれかで癌と診断した病変はすべて切除する.生検診断を行うものとは違う病理医が,切除組織診断を行い,これをGold standardとし,内視鏡診断と生検診断の正診率を比較する.以上のプロトコールで行い,内視鏡診断の正診率が生検診断の正診率と比較し10%以上劣らないことを証明するには110病変の集積が必要であった.(IRB承認,UMIN000004529)【結果】当院において2010年11月~2012年10月までの期間に 309例を対象として検査を行った.全病変のうち51病変は内視鏡診断,生検診断とも非癌であり,切除は行わなかった.87例113病変が内視鏡診断もしくは生検診断で癌と診断された.このうち2例が切除を拒否したため,85例111病変に切除を行った.男性74例,女性11例で腫瘍径中央値は20mm[6-100mm]であった.切除標本で癌と診断されたのは110病変で,深達度はEPが32例,LPMが44例,MMが21例,SM癌が13例であった.内視鏡診断の感度90.9%(100/110病変),特異度100%(1/1病変),正診率91.0%(101/111病変, 95%CI 85.7%-96.3%).生検診断の感度86.4%(95/110病変),特異度0%(0/1病変),正診率85.6%(95/111病変).内視鏡診断の正診率が生検診断に比べて10%以上劣らないことが示された.【結論】NBI拡大による内視鏡診断は生検診断に匹敵する精度を有し,癌と非癌の鑑別において生検診断にとってかわる診断ツールになりうると考える.
索引用語 食道, 内視鏡診断