セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-6:

未分化型早期胃癌のNBI併用拡大内視鏡(ME-NBI)による範囲診断の正確性の検討

演者 堀内 裕介(がん研有明病院・内視鏡診療部)
共同演者 藤崎 順子(がん研有明病院・内視鏡診療部), 山本 智理子(がん研究会がん研究所・病理部)
抄録 [目的]未分化型早期胃癌に対するESD適応拡大により,術前診断能の向上が課題である.我々はこれまでにESD症例の範囲診断の正確性について報告してきた.今回手術例も加え,範囲診断の正確性について検討を行った.[方法](検討1)対象は2010年1月-2013年2月の間に通常観察・EUSで20mm以下・M UL(-)病変と診断した未分化型早期胃癌でESDを施行した53病変である.ME-NBIで,微細粘膜構造,不規則血管像を認識して範囲診断をし,最口側,最肛門側の2点にAPCでdemarcation line(DL)上にmarkingを行い,術後病理結果との正確性を平均腫瘍径,増殖帯進展窩間距離,炎症細胞浸潤について検討した.(検討2)2011年6月-2013年2月の外科手術施行例のうち,通常観察,EUSでM,SMと診断した未分化型癌15例でも同様の検討を行った.[結果](検討1)53病変中ME-NBIでDLのmarkingを行った症例で病理標本と範囲診断が一致した箇所が93点(87.7%),不一致箇所が13点(12.3%)であった.一致例の平均腫瘍径は10.3±7.2mm,不一致例では19.3±10.2mmであり,有意差を認めた(p<0.01).(検討2)15症例中範囲診断の一致箇所が25点(83.3%),不一致箇所が5点(16.7%)であった.一致例の平均腫瘍径は34.1±16.4mm,不一致例は46.7±18.9mmであり,有意差はないが不一致例で大きい傾向にあった.ESD標本では正診部位の増殖帯進展部の平均窩間距離が周囲正常粘膜の約1.75倍であったのに対し,誤診部位では約1.24倍以下であり,両者に有意差を認めた(P<0.05).腫瘍局在及び背景粘膜性状(Up date Sydney classification)では正診例で有意に萎縮が軽度であった(p<0.05).外科症例は何れも有意差を認めなかったが背景粘膜の炎症所見が正診例で軽度の傾向であった.以上から範囲診断の正確性には腫瘍径,背景粘膜の炎症の関与が示唆された.[結論]ME-NBIは病変径が小さい例で正確な範囲診断が可能である事が示唆されたが,窩間距離の狭い増殖帯進展領域,炎症細胞浸潤が強い部位ではME-NBIでも範囲診断が困難であり,診断限界が示唆された.
索引用語 未分化型癌, ME-NBI