セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-12:

大腸NBI拡大観察による腺腫と癌の鑑別においての酢酸散布の有用性

演者 後藤 規弘(京都桂病院・消化器センター消化器内科)
共同演者 日下 利広(京都桂病院・消化器センター消化器内科), 藤井 茂彦(京都桂病院・消化器センター消化器内科)
抄録 【背景と目的】NBI拡大観察において,酢酸散布は表面構造を明瞭化し血管構造を不明瞭化することで腺管の異型度の診断能の向上に寄与すると推測されるが,十分なエビデンスは構築されていないのが現状である.大腸NBI拡大観察による腺腫と癌の鑑別において,酢酸散布による診断能の向上の有無を評価する.また,クリスタルバイオレット(CV)染色併用拡大観察との診断能の比較も行う.【方法と対象】2012年1月~2013年1月に当院でEMRもしくはESDを施行した562症例のうち,同一の拡大率の写真でNBI拡大観察(M-NBI)と酢酸散布併用NBI拡大観察(EM-NBI)の対比が可能であった48例(腺腫20例,癌28例)を評価の対象とした.当院で大腸内視鏡検査を担当する10名の内視鏡医に48例全例に対して腺腫もしくは癌の鑑別診断を5段階評価法にて評価させ,最終病理診断との一致率のreceiver operating characteristic(ROC)曲線を両側paired t-testで解析することで,モダリティー間の診断能の比較を行った.また,48例のうちCV染色併用拡大観察(M-CV)との比較も可能であった35例(腺腫11例,癌24例)においても診断能の比較を行った.【結果】48例の検討では,M-NBI群では,ROC曲線の曲線下面積(AUC)は0.689±0.0404(mean±SD),感度76.2%,特異度52.9%であり,EM-NBI群ではAUC=0.742±0.0484,感度82.4%,特異度52.6%であり,EM-NBI群においてAUCは高い傾向を示したものの,統計学的に有意ではなかった(p=0.0528).CV染色との比較も可能であった35例においての検討では,AUCはM-NBI群で0.639±0.0310,EM-NBI群で0.707±0.0660,M-CV群で0.757±0.0589であり,M-NBI群に対してEM-NBI群で統計学的に有意に高く(p=0.0230),M-NBI群に対してM-CV群で統計学的に有意に高かったが(p=0.00028),EM-NBI群とM-CV群では有意差は認めなかった(p=0.154).【結語】大腸NBI拡大観察において酢酸散布は腺腫と癌の鑑別診断に寄与する可能性が示唆された.現在前向きに症例を集積している段階でありその結果とともに提示する.
索引用語 NBI, 酢酸