セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-14:

大腸拡大内視鏡診断の課題~sessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)について~

演者 石郷岡 晋也(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科)
共同演者 小澤 俊一郎(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科), 伊東 文生(聖マリアンナ医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】SSA/Pは大腸癌の前駆病変として注目されている一方で,比較的新しい疾患概念であるため,その病理組織診断や内視鏡診断は完全には確立していない.そのような背景から,日常診療における臨床的取り扱いが問題となっている.内視鏡的には通常のhyperplastic polyp(HP)との鑑別が問題となることが多い.拡大内視鏡診断の分野では,開II型pitが有用な所見として報告され,当院でもその有用性に関して報告した(World J gastroenterol 2012 August 28; 18(32)).しかし,開II型pitは主観的な要素もあり一般的に浸透しているとは言い難い.粘液を洗浄することで開大したII型pitが閉じてしまう症例もしばしば経験され,経時的な変化に留意した観察が必要である.今回我々は,当院におけるSSA/Pの治療成績を報告し,内視鏡診断,取り扱い確立のために必要な課題を検討したい.【方法】対象は2008年1月から2012年12月までの間,当院にて拡大内視鏡を用いて表面構造を観察後に切除された113病変(HP:31病変,SSA/P:82病変).SSA/Pの病理組織診断はJSCCRによる診断基準に準じた.拡大内視鏡所見は従来のpit pattern分類に加え,II型pitの亜分類を用いて検討を行った.【成績】対象病変のうち開II型pit単独,または一部有している病変はHPで6病変(19.4%),SSA/Pで61病変(74.4%)であった.開II型pitをSSA/Pの指標としたとき,感度は約74%,特異度は約81%であった.担癌症例はHPで0病変,SSA/Pで7病変(約8.5%)であり,M癌が4例,SM浸潤癌が3例であった.【考察】SSA/Pの内視鏡診断の確立は,大腸癌のサーベイランスを行う上で重要な課題である.開II型pitはSSA/Pの指標として有用である可能性はあるが,多施設で症例を蓄積し,前向きな検討を行うことで所見に客観性を持たせることが今後の課題であろう.経過観察している病変を含めると,SSA/Pの担癌率は自験例よりも実際はもう少し低いものと思われる.したがって,現状においては通常の腺腫に対する取り扱いと同様でよいと考える.
索引用語 拡大内視鏡, SSA/P