セッション情報 ワークショップ10(消化器内視鏡学会)

拡大・超拡大内視鏡による消化管疾患の診断

タイトル 内W10-15:

大腸拡大観察における客観的診断の可能性

演者 大森 崇史(藤田保健衛生大・消化管内科)
共同演者 丸山 尚子(藤田保健衛生大・消化管内科), 平田 一郎(藤田保健衛生大・消化管内科)
抄録 【背景】現在,大腸腫瘍の診断にはpit pattern診断に加え,より簡便なNBI診断も行われている.しかしながらいずれの診断方法も客観性が乏しい場合が少なくない.【目的】大腸腫瘍の拡大内視鏡診断が客観的に行える可能性をpit pattern・NBIにおいて検討した.【検討1】pit pattern分類を数値化することで,客観的に診断できるか検討を行った.【対象】拡大観察を行った100病変(I型9病変,II型5病変,IIIs型12病変,IIIL型13病変,IV型19病変,VI型35病変,VN型7病変).【方法】各病変につき,PD(pit distortion ratio:以下PD)値(周囲長/面積),真円度((周囲長×周囲長)/面積×4π)を算出し,その平均値の比較を行った.【結果】I型・II型とIV型・V型はPD値・真円度ともに有意差を認めた(p<0.01).また,IIIs型・IIIL型とIV型・V型もPD値・真円度ともに有意差を認めた(p<0.01).【検討2】NBI観察によって得られた血管所見を数値化することで客観的に大腸腫瘍の深達度を診断できるか検討を行った.【対象】当院で施行した大腸内視鏡のうち,NBI拡大観察をフルズームで行い,血管所見が検討可能であった72病変(佐野分類:II32病変,IIIA24病変,IIIB16病変).【方法】各病変につき,血管の最大直径,面積,周囲長,フラクタル次元,真円度を測定した.【結果】最大直径と真円度ではIIとIIIA・IIIBの間に有意差を認めた(p<0.05).また面積と周囲長ではIIとIIIBとの間に有意差を認めた(p<0.05).フラクタル次元ではIIとIIIAとの間に有意差を認めた(p<0.01).またadenomaからpSM2以深癌まで含まれるIIIAを術後病理診断別に検討したところ,周囲長・面積でadenoma・pSM2未満癌よりも有意にpSM2以深癌で小さい結果であった.【結語】pit pattern診断ではIIIL型とV型に有意差を認め,NBI診断ではIIとIIIA・IIIBの間に有意差を認めており,いずれの診断方法も客観的に行える可能性が示唆された.特にIIIAは,数値化を行うことで,pSM2以深癌の鑑別が可能であり,診断に有用と考えられた.
索引用語 pit pattern, NBI