セッション情報 ワークショップ11(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

病態別に見た肝予備能評価の新展開

タイトル 外W11-1:

術前肝機能評価におけるアシアロシンチの有用性の検討

演者 田中 基文(神戸大・肝胆膵外科)
共同演者 福本 巧(神戸大・肝胆膵外科), 具 英成(神戸大・肝胆膵外科)
抄録 【目的】99mTc-GSAシンチグラフィー(アシアロシンチ)は肝予備能の定量的評価法として期待されてきたが,未だ定まった見解が得られておらず,あくまで手術適応決定における補助的位置付けに留まっている.今回,アシアロシンチの各データと従来の肝機能評価因子との関連性を解析するとともに,術後肝不全予測因子としてアシアロシンチの有用性を検証した.【方法】2005年より2012年12月までに当科で施行した肝細胞癌に対する肝切除のうち,術前アシアロシンチを施行した247例においてHH15,LHL15,GSAindex(LHL15/HH15),肝内99mTc-GSA取込み量VLmgと,種々の肝機能因子および肝線維化との関連例について解析した.また肝葉切除98例において,ISGLSにより定義されたposthepatectomy liver failure (PHLF)の予測因子を検討した.解析はカイ2乗検定およびt検定にて施行した.【成績】肝機能はChildAが213例(86%),Bが34例であった.相関解析では,HH15,LHL15ともにICGR15との有意な相関を認めた(r=0.51; P<0.0001,r=-0.58; P<0.0001).HH15,LHL15の正常値を0.60以下,0.91以上として群間比較すると,異常群ではアルブミン低値,血小板低値,ICGR15高値との相関を強く認めた(全てP<0.001).また線維化マーカー(ヒアルロン酸,IV型コラーゲン,P-III-P)とも強く相関し(全てP<0.001),切除肝の線維化については,HH15およびLHL15が共に異常だった場合,F3/4の割合が74%と非常に高率であった (P<0.001).また肝葉切除98例(右葉71例,左葉27例)における術後PHLFは40例(41%)に発生したが,PHLFの有無においてICGR15,血小板,アルブミン値,線維化マーカーは有意差を認めなかった一方で,残肝領域のアシアロカウント比を乗じた残肝LHL15,残肝GSA index,残肝VLmgはそれぞれPHLF発生群で有意に低値だった.(全てP<0.001).【結論】アシアロシンチは肝全体の機能評価としてICGR15,肝線維化と強く相関した.また分肝機能を算出することで残肝の肝予備能評価が可能であり,肝葉切除後のPHLF予測に有用と考えられた.
索引用語 アシアロシンチ, 術前肝機能評価