セッション情報 ワークショップ11(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

病態別に見た肝予備能評価の新展開

タイトル 外W11-2:

アシアロSPECT CT-fusionを用いたmarginal機能的肝切除率はmajor hepatectomy術後合併症発生の危険因子である

演者 林 洋光(熊本大大学院・消化器外科学)
共同演者 別府 透(熊本大大学院・消化器外科学DELIMITER熊本大附属病院・消化器癌集学的治療学), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学)
抄録 【緒言】大量肝切除後の合併症は重篤化することが多く,特に肝不全は致死的ともなる.従来,ICG試験や肝障害度を用いた肝機能評価と切除肝重量(体積的切除率)を用いた術前肝予備能評価法が行われているが,術後合併症予測において十分とは言い難い.我々は,アシアロSPECT-CT fusion systemを用いた機能的切除率を従来の評価法に加えて使用している.今回major hepatectomy後合併症予測における機能的肝切除率の有用性について検討した.【対象】2007年5月から2012年6月までの肝切除440例中,major hepatectomy施行症例123例が対象(肝細胞癌78例,肝内胆管癌12例,混合型肝癌2例,大腸癌肝転移21例,良性その他10例).右・左肝切除(拡大含む)106例,右・左3区域切除11例,中央2区域6例.内40例で術前門脈塞栓術を併施.機能的肝切除率は全肝に対する切除領域へのアシアロ肝シンチ取り込みの割合から算出した.ICGR15値と合わせた体積的肝切除率もしくは機能的肝切除率を用いた術前肝予備能評価からsafeかmarginalかを判定し,術後合併症リスクについて統計学的解析を行った.【結果】術後合併症を35例(28%)で認め,内9例(7%)が肝不全であった.7例(5.7%)が在院死亡された.marginal機能的切除率は術後合併症の危険因子として抽出された(OR 4.731, P=0.007).marginal機能的切除率は術後肝不全の危険因子となる傾向を認めた (OR 4.250, P=0.06).一方,従来の体積的切除率は有意な関連を認めなかった.肝細胞癌78例では,marginal機能的切除率が有意に術後合併症,在院死亡と関連した(それぞれP=0.023と0.031).【まとめ】大量肝切除における術前肝予備能評価において,marginal機能的肝切除率は術後合併症の危険因子であった.とくに,背景肝疾患を有することが多い肝細胞癌症例でその有用性が高いことが示唆された.
索引用語 機能的肝体積, 術後合併症