セッション情報 ワークショップ11(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

病態別に見た肝予備能評価の新展開

タイトル 外W11-3:

肝アシアロシンチによる術前肝予備能の評価とその有用性

演者 河地 茂行(東京医大八王子医療センター・消化器外科・移植外科)
共同演者 千葉 斉一(東京医大八王子医療センター・消化器外科・移植外科), 島津 元秀(東京医大八王子医療センター・消化器外科・移植外科)
抄録 【背景】肝切除後肝不全には肝予備能と切除肝容積の2因子が大きく関与しているため,肝予備能を正確に把握し許容肝切除量を決定することが極めて重要である. 当科では術前肝予備能評価法の一つとして肝アシアロシンチを利用しておりその有用性について検討した.【対象と方法】2007年から2012年までに肝切除術前に肝アシアロシンチにて肝予備能を評価した103例を対象とした.肝アシアロシンチにおけるGSA投与後15分での肝集積率LU15にSPECT画像から算出した機能的残肝率を乗じた残肝LU15によって肝予備能を評価し,残肝LU15値が13.0以上を肝予備能良好とした. 【結果】症例の内訳は肝細胞癌58例,肝門部胆管癌15例,転移性肝癌13例,胆管細胞癌8例, 胆嚢癌6例,その他の肝腫瘍3例であった.全症例のうち肝予備能評価により非切除と判断した症例は11例であった.術式別ではHr0:10例,HrS:13例,Hr1:24例,Hr2:39例,Hr3:7例であった.術後合併症は22例に認め,胆汁漏11例,腹腔内膿瘍3例,胆管空腸吻合不全3例,肝不全(高ビリルビン血症(5mg/dl以上)7日間以上持続)3例で,術後在院死亡は4例に認めた.肝アシアロシンチにおけるLU15はICG R15と相関関係を認めたが(R2=0.2879),機能的残肝率を乗じた残肝LU15はICG R15と相関関係を認めなかった(R2=0.094).術前ICGR15が10.0以上で右葉切除・3区域切除または20.0以上で左葉切除・前区域切除・後区域切除を施行した症例を17例認めたが,17例全例で残肝LU15は13.0以上であり術後肝不全は認めなかった.また残肝LU15が13.0以下の肝切除を施行した14例では3例に肝不全を認めた一方,残肝LU15が13.0以上の肝切除を施行した79例では肝不全は認めなかった.【結語】肝アシアロシンチは,全肝機能検査に加えて分肝機能検査を施行することにより切除後の残肝機能予測が可能で,術後の肝不全予測だけでなく,患者の至適術式の決定に有用な肝予備能評価方法であることが示唆された.
索引用語 アシアロシンチ, 肝予備能