セッション情報 ワークショップ11(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

病態別に見た肝予備能評価の新展開

タイトル 肝W11-8:

肝発癌リスク・肝予備能評価における肝弾性度測定の意義

演者 建石 良介(東京大・消化器内科)
共同演者 増崎 亮太(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】FibroScanによる肝弾性度は,門脈圧亢進症を精度良く予測できる.肝予備能検査としての肝弾性度測定の有用性について検討した.【方法】Study1: 2004年12月~2005年6月の期間に肝弾性度測定を行ったC型慢性肝炎患者866人(平均年齢62歳,男/女=398/468)を対象に,発癌と死亡をイベントとして,Study2:2005年~2011年に当科でラジオ波焼灼療法(RFA)にて加療された初発の肝細胞癌患者のうち,肝弾性度測定が可能であった722人(平均年齢69歳,男/女=457/265,Child-Pugh A/B/C=580/136/6)を対象に死亡をイベントとしてそれぞれコホート研究を行った.累積イベント発生率は,Kaplan-Meier法,各因子のリスク推定は単変量・多変量Cox比例ハザードモデルを用いて解析した.肝癌患者の死因に関しては,競合ハザードモデルを用いて肝不全死のリスクについて分けて検討した.【成績】Study1:対象患者の肝弾性値の中央値は,8.3(4分位範囲:5.6-14.6)kPaであった.平均観察期間6.1年間に152人の肝発癌を認めた.5年累積発癌率は,最も低い群(≦10kPa)で2.2%,最も高い群(>25kPa)で50.9%と肝弾性値で明瞭に層別化された.さらに肝弾性値は,死亡についても多変量解析において年齢,性,飲酒量,血小板数,アルブミン,AST値と独立した危険因子(P<0.001)であった.Study2:対象患者の肝弾性値の中央値は,22.1(4分位範囲:13.7-35.3)kPaであった.コホート全体の5年生存率は,62%であった.肝弾性値は,単変量解析において有意な予後予測因子(P<0.001)であったが,年齢,Child-Pughスコア,最大主腫瘍径,病変数,腫瘍マーカーで補正した多変量解析では,傾向は見られるものの有意ではなかった(P=0.09).そこで競合ハザードモデルで肝不全死のみを検討したところ,肝弾性値はChild-Pughスコアと独立した予後因子であった(肝弾性値>15kPa超vs≦15kPaのハザード比7.57,P=0.048).【結論】FibroScanによる肝弾性度測定は,肝予備能評価において独立した指標となり得る.
索引用語 エラストグラフィ, FibroScan