セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-2:

日本人の上腹部症状と胃形態との関連ー人間ドックの有症状者における検討ー

演者 川田 晃世(群馬大・消化器内科)
共同演者 栗林 志行(群馬大・消化器内科), 草野 元康(群馬大附属病院・光学医療診療部)
抄録 【目的】われわれは以前から,上腹部症状は男女とも瀑状胃者には多いが胃下垂者には少ないことを報告してきた.ここでは人間ドック受診者において有症状者からみた上腹部症状と胃形態との関連を検討した.【方法】当科関連施設での人間ドックにおいて,レントゲン造影検査の受検者を対象とした.上腹部症状は「胸やけ・ゲップ」のreflux (R)群,「胃もたれ,胃が重いなど」のdyspepsia (D)群,「食後の心窩部痛,空腹時痛」のepigastralgia (E)群に,看護師による問診記録から医師が分類した.胃形態は食道造影後の立位第1斜位像で胃底部が屈曲しバリウムの貯留をみとめるのを瀑状胃(cascade stomach: CS),立位正面充満像で胃角部が両側腸骨棘を結ぶ線より下に位置するものを胃下垂(gastroptosis: P),それ以外を正常(normal: N)とした.全受診者の中から連続する有症状者を対象とし,各症状群,胃形態,BMI,年齢との関連を検討した.【成績】対象者は男1000名(平均年齢47.8±9.13 (S.D.)才,BMI=24.0±3.49,全受診者の10.5 %),女848名(48.0±9.30才,BMI=22.0±3.74,同15.4 %)であり,有症状者は女で有意(p<0.05)に高かった.R,D,Eの症状を訴えたのは男ではそれぞれ31.1,48.2,25.4 %,女で29.7,46.9,38.1%であり,Eは女に有意に高かった.胃形態CS,N,Pの頻度は男でそれぞれ31.1,65.6,3.5 %,女は7.9,61.5,31.0 %であった.男女ともRとCSは有意に関連したが,PはRと逆相関であった.男女ともRは高BMI (男24.6±3.34,女22.7±3.91),高年齢(男48.9±9.36,女48.9±9.36才)であり,Eは低BMI (男23.5±3.39,女21.6±3.72)で低年齢(男45.7±9.22,女46.3±8.24才)であった.【結論】上腹部症状は男より女に多く,最も多い症状は男女とも「胃もたれ,胃が重い」であった.男女とも胸やけ症状は瀑状胃と密接に関連したが,胃下垂は症状に対し抑制的であった.日本人の上腹部症状は性差および胃形態,BMI,年齢による違いが認められた.
索引用語 瀑状胃, 胃下垂