抄録 |
(背景・目的) 機能性ディスペプシア(FD)の患者は,随伴症状としてのGERD・IBS症状が比較的高率に合併していることが知られている.FD患者,NERD患者は胃排出能の障害を,それぞれ30%程度合併している(Digestion, 2009).このNERD患者の逆流症状と睡眠障害との間には相関関係があることが知られているが,FD患者における睡眠障害の実態や消化管運動機能との相関については報告が少なく,今回我々は,睡眠障害に関してFD患者と健常者における比較検討を行うとともに,一部の症例で薬剤の介入試験を行い,興味深い知見を得たので報告する(JGH, in press, 2013).(対象と方法)Rome III基準のFD患者(n=94)に対し,GSRS日本語版ピッツバーグ睡眠質問表(PSQI),SRQ-D質問表によりスコア化した.胃排出能は13C-acetate呼気試験を用いた.健常者群は52名とした.一部のFD群に関しては,nizatidineとplaceboによるcross-over試験を行い,投与前後でのGSRS, PSQI,胃排出能を評価した.(結果)FD群におけるglobal PSQIの合計スコアは6.67±0.40であり,健常者群4.67±0.28に比し有意に高値であった.FD群におけるglobal PSQIのスコアと心窩部痛(p=0.003),心窩部灼熱感(p=0.013),早期飽満感(p=0.015),酸逆流(p=0.009)とのあいだには有意な相関関係を認めたが,健常者群においては有意な相関関係をいずれも得られなかった.加えて,FD群ではglobal PSQI値とSRQ-D値において有意な相関関係を認めたが(p=0.001)が,健常者では認めなかった.また,胃排出能の指標であるTmax値はFD群,健常者群ともにPSQIスコアとの間に相関関係は認めないものの,FD群においてはTmax値,T1/2値と主観的睡眠スコアとの間に有意な相関関係を認めた.Nizatidine投与群では心窩部痛および胃食道逆流スコア,さらにはTmax, T1/2値ともに有意な改善を認めた. (結論)FD患者の睡眠障害は健常者群に比較し,有意に臨床症状とうつ症状と相関していた. |