セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-6:

上腹部症状に関連する内視鏡的,組織学的および血清学的マーカーの同定

演者 田原 智満(藤田保健衛生大・消化管内科)
共同演者 柴田 知行(藤田保健衛生大・消化管内科), 平田 一郎(藤田保健衛生大・消化管内科)
抄録 背景・目的:上腹部症状に関連したマーカーを同定する目的で,上腹部症状と内視鏡所見,組織学的胃炎,血清ペプシノーゲン(PG)との関連につき検討した.対象・方法:当院にて上部消化管内視鏡検査を施行した207名のProspective cohort (有症状者114名,無症状者93名) につき,内視鏡所見,H. pylori 感染状況,内視鏡的萎縮,組織学的胃炎,血清PGを検索し,上腹部症状との関連を検討した.尚,消化性潰瘍,びらん性食道炎,1cm以上のポリープ,癌を有する患者は検討に加えなかった.結果:解析に加えたすべての内視鏡所見において,前庭部の櫛状発赤(OR = 3.90, 95% CI = 1.20-12.64),および十二指腸潰瘍瘢痕(OR = 3.41, 95% CI = 1.08-10.79)と上腹部症状との間に有意な関連を認めた.前庭部の櫛状発赤,十二指腸潰瘍瘢痕は胃痛,上腹部不快感,胃もたれやげっぷなどのいくつかの共通した症状と関連を認めたが,H. pylori 感染状況,組織学的胃炎の程度に関し両者は全く異なる病態を示していた.内視鏡的萎縮に関しては,特にH. pylori陽性者において,症状を有する群では萎縮の程度が軽度であり (全有症状者p<0.0001,胃痛p=0.02,胃もたれp=0.0005,胸焼けp=0.02),有症状者では体部,前庭部ともに腸上皮化生の程度が軽く(体部p=0.03,前庭部p=0.02),いくつかの症状とPGI/II比高値との間に有意な関連を認めた.(胸焼けp=0.0005,腹痛 p=0.003)結論:前庭部の櫛状発赤,十二指腸潰瘍瘢痕と上腹部症状との関連が示唆された.胃粘膜萎縮の程度は上腹部症状と逆相関していると考えられた.
索引用語 上腹部症状, 内視鏡