セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-8:

FD治療における胃酸分泌抑制薬と胃運動改善薬併用の意義について

演者 大野 志乃(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
共同演者 櫻田 智也(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科), 屋嘉比 康治(埼玉医大総合医療センター・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】FDはその病態生理において胃適応性弛緩障害と胃排出遅延,胃蠕動運動抑制,それに胃感受性亢進が報告されている.その原因としては急性胃腸炎や心理的ストレスが背景としてあることが推測されている.治療においては酸分泌抑制薬と胃運動改善薬が主に投与され,さらに抗不安薬なども症例によっては投与されている.しかし,これらの薬剤の併用療法の効果については十分に検討されていない.【方法】演者らはFD症例の症状とさらに心理的背景をGSRS調査法とFD症状を拾い上げるVAS法,さらに,鬱の評価のSDS質問紙,不安評価のSTAI質問紙,さらにヒポコンドリアを評価するSSRSを用いて消化器症状と心理的背景を評価し,さらにH2-受容体拮抗薬のファモチジン単独投与およびイトプリドとの併用効果について検討した.これまでの報告では酸抑制薬単独かあるいは運動改善薬単独での治療の報告は多く認められるがこれらの2種の薬剤の併用については報告がまれである.演者らは63例のFD症例に対して無作為に2群(1群:ファモチジン単独投与,2群:ファモチジンとイトプリドとの併用群)にわけて併用効果について検討した.【成績】1群においてはGSRS評価では酸逆流症状の改善に優れていたが,腹痛や消化不良症状においてさらにGSRS全体の評価においては2群の併用群において優れていた.また,VASによる評価では1群においてもたれ感の改善に優れていたが,2群では早期飽満感や膨満感の改善において優れていた.全体の評価では1群,2群ともに有意に完全していたが,2群においてより改善が顕著であった.心理的偏倚については両群の治療において改善は認められなかった.【結論】酸分泌抑制薬と胃運動改善薬の併用は酸分泌抑制薬単独投与に比べ,より症状改善が期待できる.
索引用語 胃運動改善薬, 胃酸分泌抑制薬