セッション情報 |
ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)
機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-
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タイトル |
消W12-9:FD症状が生活や心理面に与える影響及びFD症状に対するPPIの有効性の検討
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演者 |
中田 浩二(東京慈恵会医大・消化管外科) |
共同演者 |
松橋 信行(NTT東日本関東病院・消化器内科), 春間 賢(川崎医大・消化管内科) |
抄録 |
【背景】機能性ディスペプシア(FD)は患者のQOLを著しく損なうことが知られている.FDは心窩部痛症候群(EPS)と食後愁訴症候群(PDS)の2病型に分けられるが,各病型の生活や心理面への影響は明らかではない.【方法】2011年4月~2012年7月にGERD研究会の臨床試験参加50施設を受診した成人患者のうち,胃食道逆流症(GERD)症状を有し,文書による同意が得られた患者を対象とした.内視鏡検査を実施後,標準用量のプロトンポンプ阻害剤(PPI)を4週間投与した.投与開始時に患者背景及び生活習慣を調査し,投与開始時,2週後,4週後にはそれぞれGERD-TEST(本試験用に策定した調査票),HADS,SF-8を用いたアンケートにより,GERD/FD症状,生活不満度(食事,睡眠,仕事,気分への不満),不安・抑うつ及びQOLを調査した.【結果】調査票及びアンケートを共に回収しえた340名のうち,初回アンケート及び内視鏡検査を投与開始時から所定の期間内に実施した290名(男性178名,女性112名)を解析対象とした.年齢,BMIの平均は57.5±13.9歳,24.0±3.9 kg/m2であった.FD症状を有した患者は219名で,病型はEPSが39名(18%),PDSが34名(15%),EPSとPDSの併存が146名(67%)であった.生活不満度,不安・抑うつ及びQOLのうち,FDの病型で有意差があったのは,生活不満度全4項目,不安・抑うつ及び精神的QOLであり,いずれも併存群で最も悪かった.GERD/EPS/PDS症状の影響の多変量解析では,身体的QOLにはEPS症状が,不安・抑うつ,精神的QOL及び食事への不満にはPDS症状が,睡眠への不満にはGERD/EPS症状が同程度,仕事及び気分への不満にはGERD/PDS症状が同程度に,それぞれ影響していた.また,PDS症状はEPS症状に比べてPPIへの反応性が低い傾向がみられた.【考察】GERD/EPS/PDS症状はいずれも生活や心理面に悪影響を及ぼすが,PDS症状の影響が最も大きくPPIへの反応性も低いため,症状が残る場合は治療法の再考も含めた長期的治療戦略をとる必要がある. |
索引用語 |
機能性ディスペプシア, 健康関連QOL |