セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-10:

機能性ディスペプシアに対するラベプラゾールのプラセボ対照多施設共同無作為二重盲検比較試験による有効性の検討

演者 岩切 龍一(佐賀大附属病院・光学医療診療部)
共同演者 木下 芳一(島根大・2内科), 荒川 哲男(大阪市立大大学院・消化器内科学)
抄録 [目的]機能性ディスペプシア(FD)の診療において,本邦患者に対するプロトンポンプ阻害剤(PPI)の有効性については明らかではない.今回我々は,ラベプラゾール(RPZ)を用いたプラセボ対照多施設共同無作為二重盲検比較試験: the SAMURAI study (Suppression of Acid Milieu with Rabeprazole Improving Functional Dyspepsia)を施行した.[方法] Rome III基準で診断されたFD 患者で,1週間の単盲検プラセボ治療が無効であった症例を無作為に4群(プラセボ,RPZ 10mg, 20mg, 40mg, 1回/日)に割付け8週間治療した.主要評価項目は,7段階Likert Scaleで構成したFD質問紙票dyspepsia symptom questionnaire (DSQ) と症状日誌における4つのFD症状(心窩部痛,心窩部する寛解率とした.[結果] 392例がエントリーされ,単盲検試験後に307例が治療期へ移行し,321例が治療完遂し解析対象となった.4群間(n=80, 77, 76, 74)における背景因子に差はなかった.8週後における症状完全消失率は,17.9, 灼熱感,早期飽満感,食後のもたれ感)の,治療8週後の症状完全消失率とし,副次評価項目はこれら症状に対22.4, 29.3, 27.0%であったが4群間における統計学的有意差はなかった.寛解率は,28.2, 42.1, 45.3, 39.2%であり,プラセボ群とRPZ 20mg群との間に有意差が認められ(p=0.028),症状日誌でも同様の結果が得られた(p=0.017).症状の完全消失までの期間や被験者印象評価に関しても,プラセボ群とRPZ 20mg群との間に有意差が認められた(p=0.044, p<0.001).治療期間において有意な有害事象は認められなかった.[結語] 本邦で施行されたRPZを用いたプラセボ対照多施設共同無作為二重盲検大規模比較試験(the SAMURAI study)において,RPZ 20mgはFD患者の治療に有用であることが示唆された.
索引用語 機能性ディスペプシア, プロトンポンプ阻害剤