セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-11指:

大規模健常者コホートを用いた上部消化管諸症状のクラスター分析と奏功薬剤の予測

演者 山道 信毅(東京大・消化器内科)
共同演者 光島 徹(亀田メディカルセンター幕張), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】機能性ディスペプシアFDや非びらん性胃食道逆流症NERDの頻度が増加する中,器質的障害ではなく,「上部消化管症状自体を把握する」ことの重要性が高まっている.これまでの報告や研究では上部消化管症状全体を捉え,そのリスクを解析する手法が行なわれてきたが,個々の症状の解析は不十分であった.そこで本研究では,日本人健常成人約20,000人の大規模横断データを利用して,1) 様々な上部消化管症状の相互の関連を明らかにすること,2) 各症状と相関する背景因子を個別の多変量解析で明らかにすること,3) 各症状に対する適切な薬剤選択について個別に解析すること,を目的とした.【方法】大規模人間ドック2010年受診者(千葉県千葉市)のうち,20歳以上で胃切除歴・データ欠損がなく,PPI・H2阻害剤・胃粘膜保護剤を内服していない,研究参加同意者18,097人を解析対象とした.上部消化管症状としてFSSG(Frequcney Scale for the Symptoms of GERD)の12症状を用い,クラスター分析による12症状相互の関連,多変量解析による各症状の背景因子の解析を行なった.また,PPI・H2阻害剤内服者と胃薬非内服者の背景因子の比較から,奏功薬剤の予測を行なった.【結果・考察】クラスター分析による各症状間の距離の計算から,12症状は「胸やけ」「胃もたれ」「胃酸逆流」「咽喉頭症状」「食事途中の満腹感」の5群に分類できることがわかった.各12症状について多変量解析を行なったところ,各症状の背景因子は大きく異なるが,5分類された症状群と背景因子である「基本因子(年齢・性別・BMI)」「胃内環境(ピロリ菌感染・萎縮性胃炎)」「NSAID」「睡眠障害」「成人後体重増加」「不適切な食習慣」「喫煙・飲酒」との相関には一定の傾向が認められ,5群分類が有用であると考えられた.また,PPI・H2阻害剤常用者との比較から,各上部消化管12症状について,酸分泌抑制によって制御しやすい因子・制御しにくい因子が存在することが示唆された.
索引用語 クラスター分析, FSSG