セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-13:

幼少期ストレスで惹起される胃グリア細胞の形態変化と胃運動機能への影響

演者 藤川 佳子(大阪市立大大学院・消化器内科学)
共同演者 田中 史生(大阪市立大大学院・消化器内科学), 富永 和作(大阪市立大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景】機能性ディスペプシアの病態生理に幼少期ストレスが関与するが,ストレス負荷が運動や知覚などの消化管機能の根幹となる消化管神経叢に与える影響は不明である.今回,神経細胞と共に消化管神経叢を構成するenteric glial cell (EGC)に注目し,ストレス応答としてのEGC形態変化と胃運動機能について検討した.【方法】 Wistar系雄性ラットを用い,生後2日目~14日目まで1日3時間母子分離ストレス(maternal separation: MS)を与えたMS群と無処置のコントロール群に対して,各々8週齢時に水浸急性ストレス負荷を継時的に行った.ストレス負荷後に胃の組織を採取し,EGCマーカーであるglial fibrillary acid protein (GFAP)抗体と腸管神経細胞のマーカーであるHuC/D抗体を使用し,筋層間神経叢のwhole mount標本の免疫染色にてEGCの形態的評価を行った.【結果】1. EGCは腸管神経細胞周囲から神経細胞に向かって突起を伸ばしていた,突起の形態は先端が細い糸状のタイプ(filament type)がほとんどであったが,一部の突起では先端が膨化していた(sprout type).2. sprout typeでのEGC突起の割合は,コントロール群では4%に対してMS群では13%であった.急性ストレス負荷(8時間)によりsprout typeのEGC突起は,両群で増加を認めた(17% vs. 25%).3. 急性ストレス負荷によるsprout typeの突起先端面積は,コントロール群では変化はなくMS群では増大していた(0.8 vs. 1.9 μm2, p < 0.05).4.フェノールレッド法による胃排出能は,ストレス負荷により,コントロール群に比しMS群では遅延した.【結論】幼少期に加え成人期ストレス負荷は,胃EGCの形態的変化を引き起こし,胃運動機能に影響を与えることが示唆された.
索引用語 機能性ディスペプシア, 胃グリア細胞