セッション情報 |
ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)
機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-
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タイトル |
消W12-14:胃筋層間神経叢の抑制性運動神経に発現するTRPV2イオンチャネルの抑制及び過度な活性化いづれもが胃排出亢進を引き起こす
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演者 |
三原 弘(富山大・3内科) |
共同演者 |
鈴木 庸弘(富山大・3内科), 杉山 敏郎(富山大・3内科) |
抄録 |
【目的】TRPV2イオンチャネルは,機械伸展刺激,化学物質で活性化する非選択性陽イオンチャネルで,我々は,マウス小腸の抑制性運動神経に存在するTRPV2が,機械伸展刺激やある種の脂質を感知して活性化し,一酸化窒素の放出を介して消化管の弛緩を引きおこし,内容物の肛門側への素早い移動をもたらすこと,胃の抑制性運動神経にもTRPV2が発現していることを明らかにしてきた.機能性ディスペプシア患者や,感染後胃腸障害動物モデルにおいて,胃の適応性弛緩が障害されていること,胃排出遅延及び早期排出いづれもが症状と関連しうることが報告され,抑制性運動神経障害の関与が示唆されているが,その分子機構及び,胃におけるTRPV2の発現及び機能の解明は不十分である.【方法】RT-PCR法及び,免疫染色法により,マウス胃における抑制性運動神経のTRPV2発現を検討した.単離胃内圧測定を行い,用量依存的な内圧変化を測定した.フェノールレッド試験薬による胃排出試験法を用いて, TRPV2活性化剤であるprobenecid,lysophosphatidyl cholineの作用を対照群と比較し,TRPV2阻害剤である tranilastの効果及び,tranilast単独の効果を検討した.【結果】マウス胃組織より,TRPV2のmRNAが検出され,胃体部から前庭部までの筋層間神経叢で,一様に TRPV2が発現しており,nNOS陽性神経(ほとんどが抑制性運動神経)の,86.5%で発現が確認された.用量刺激による胃内圧減少率は,probenecidにより有意に増加し,その効果はtranilast,TTX,NOS阻害剤などで阻害された.胃排出試験では,TRPV2活性化剤を 同時に胃内に投与すると,対照群に比較して胃排出が有意に促進され,tranilastを同時に投与すると,その促進効果が抑制された.また,興味深いことに,tranilast単独でも,胃排出が有意に促進された.【結論】胃の抑制性運動神経に発現するTRPV2を介した胃の適応性弛緩が,促進されても,抑制されても,胃内容物の排出を促進させる可能性が示唆された. |
索引用語 |
胃抑制性運動神経, TRPV2 |