セッション情報 ワークショップ12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化吸収学会合同)

機能性ディスペプシア-診断と治療の現況を巡って-

タイトル 消W12-15:

FD症状を緩和する緑茶主成分Epigallocatechin gallateによる小胞体シャペロンGRP78抑制を介したnNOS活性化機構の検討

演者 正岡 建洋(慶應義塾大・消化器内科)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科), J. Tack(University of Leuven, Translational Research Center for Gastrointestinal Disorders)
抄録 【目的】本邦における主たる嗜好品である緑茶はFunctional dyspepsia (FD) 患者においてGSRS問診票のスコアを低下させる効果が報告されている (中澤ら Prog.Med. 2010)が,その機序は不明である.また,緑茶の主成分である(-)-Epigallocatechin gallate (EGCG)は小胞体シャペロンである78 kDa glucose-regulated protein (GRP78)のATP結合部位に結合し,活性型の単量体を非活性型の二量体に変化させることでその活性を阻害することが報告されている(Svetlana et al. Cancer Res.2006).一方,FDの一病因と考えられている胃排出遅延を呈するモデル動物では胃内神経叢における神経型一酸化窒素合成酵素 (nNOS)発現の低下が報告されている(Gangula et al. Neurogastroenterol Motil. 2011).今回,我々は緑茶によるFD症状緩和効果の機序としてEGCGがnNOSに作用している可能性について検討した.
【方法】蛍光免疫組織化学でラットAuerbach神経叢及びnNOSの発現が報告されている(Lajoix et al. Diabetes 2001) rat insulinoma cell line INS1EにおけるGRP78のタンパク質レベルでの発現について検討した. INS1Eにおいて,EGCG 10μMの4時間投与による細胞内NOの変化を蛍光色素DAF2-DAを用いて検討した.また,GRP78遺伝子をsiRNA法でknockdown後,細胞内NOの変化とタンパク質レベルでのGRP78発現をウエスタンブロット法で検討した.
【成績】ラットAuerbach神経叢内nNOS陽性細胞においてGRP78の共発現は認められなかったが,INS1EはGRP78陽性であった.EGCG投与により細胞内NO量は増加した(p = 0.08).更にGRP78 knockdownにより,GRP78はタンパク質レベルで発現が低下し,細胞内NO量は増加した(p<0.05).
【結論】緑茶主成分EGCGがGRP78抑制を介してnNOSを活性化している可能性が示唆された.
索引用語 Functional dyspepsia, 一酸化窒素