セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

NST活動の現状と問題点

タイトル 消W13-2:

大学病院における全科型NST活動の現状と今後の課題

演者 佐々木 雅也(滋賀医大・栄養治療部)
共同演者 栗原 美香(滋賀医大・栄養治療部), 藤山 佳秀(滋賀医大・消化器内科)
抄録 【目的】 大学病院におけるNST活動の現状と課題について検討する.【方法】当大学附属病院では,全科型NSTが稼働して10年目を迎えている.年間のNSTサポート症例数は600名を超え,3000名を超える症例の栄養サポートをおこなってきた.サポート内容は,静脈栄養や経腸栄養への関わり,PEG造設,嚥下障害患者への介入など幅広い.なかでも,間接熱量測定を用いたエネルギー代謝の測定から,個々の病態に応じた至適投与量の設定を試みている.耳鼻咽喉科医師・言語聴覚士による摂食・嚥下チーム,歯科医師・歯科衛生士による口腔ケアチームとも連携して活動している.【成績】 対象疾患は多岐にわたるが,消化器内科と消化器内科が多く,合わせて全体の約3分の1を占めた.栄養評価の目的での介入依頼が多いが,PEGを含めた嚥下障害患者への関わりが約20%,また間接熱量測定による栄養管理の依頼が約10%であった.NST介入時,静脈栄養のみでの栄養管理が30%を占めた.しかし,介入終了時には,静脈栄養のみの症例は11%に減少し,経口摂取可能となった症例,経腸栄養併用の症例が増えた.これには,嚥下機能の評価と嚥下リハビリテーション,口腔ケアの充実が必須であった. NST稼働後,院内のTPN調整数は約30%減少し,食品扱いの経腸栄養剤の使用量が飛躍的に増加するなど,院内全体の栄養管理も大きく変化した.NST加算の算定件数は月220件程度であるが,NSTの経済効果は年間4000万円程度と概算される.大学病院のNSTは医学部学生に対する栄養教育の場であり,さらに様々な診療科との連携により各種疾患のエネルギー代謝を検討した臨床研究は,臨床栄養のエビデンス発信としても有用であった. 転帰として,自宅への退院は約60%に過ぎず,20%が転院であった.【結論】 大学病院のNSTは,栄養管理におけるサポートのみならず,教育や臨床研究の場としても重要である.今後は,地域連携の強化による地域一帯型NSTの構築が望まれる.
索引用語 NST, 栄養サポート