セッション情報 ワークショップ8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患と胆汁酸

タイトル 消W8-6:

非環式レチノイドとGW4064(FXR ligand)併用による肝癌抑制効果

演者 大野 智彦(岐阜大・消化器病態学)
共同演者 清水 雅仁(岐阜大・消化器病態学), 森脇 久隆(岐阜大・消化器病態学)
抄録 【目的】レチノイドX受容体RXRαのリン酸化修飾に伴う機能不全はヒト肝発癌に深く関与している。一方、RXRαとheterodimerを形成して活性化するファルネソイドX受容体FXRも肝癌に関与している。今回我々は、RXRα ligandの非環式レチノイド(ACR)と、合成FXR ligandのGW4064との併用処理による、肝癌細胞に対する効果とそのメカニズムについて検討した。【方法】ヒト肝癌細胞株HLE、HLFおよびHuH7と正常肝細胞株HcをACR、GW4064でそれぞれ単独あるいは併用処理し、細胞増殖抑制の相乗効果をCI indexを用いて検討した。また、HLE細胞をACRとGW4064で併用処理し、RXRα、ERK、Stat3のリン酸化とcPARPの発現をWBにて検討した。また、同条件下におけるp21cip1、c-myc、cyclin D1およびSHPの発現をrealtime RT-PCRで、細胞周期への影響をFACSで、apoptosisをTUNEL法とAnnexin-V assayで、FXREの転写活性をReporter assayでそれぞれ検討した。【成績】ACRおよびGW4064は、Hc細胞より優先的にHLE、HLFおよびHuH7細胞の増殖を抑制し、さらに併用処理で相乗的なapoptosisの誘導と細胞増殖抑制を認めた。これらの薬剤の併用は、RXRα、ERK、Stat3のリン酸化を抑制し、FXREの転写活性を相乗的に上昇させ、 p21cip1およびSHPの発現増強とc-mycおよびcyclin D1の発現を低下させた。さらにG0-G1期における細胞周期停止が認められた。【結論】ACRとGW4064の併用は、共同的にRXRαのリン酸化を阻害し、FXRの標的遺伝子の発現を調節することで、apoptosisと細胞周期停止を誘導し、相乗的な肝癌細胞の増殖抑制効果を示した。この結果、ACRとGW4064による併用肝発癌化学予防の可能性を示唆するものと考えられた。
索引用語 ACR, FXR