セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

NST活動の現状と問題点

タイトル 肝W13-7:

肝硬変に対する栄養療法,特にチームでの取り組みが生命予後を改善する

演者 岩佐 元雄(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 岩田 加壽子(三重大附属病院・栄養指導室), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】肝硬変(LC)に対する栄養療法は低栄養状態の是正を目的とした食事指導が基本であり,さらに,分岐鎖アミノ酸投与,就寝前軽食(LES)療法の有用性が報告され,JSPENおよびESPENのガイドラインでも推奨されている.しかし,これらの介入を効率的に実行するためには,医師,栄養士,薬剤師,看護師がチームとして患者教育にあたるシステム(NST)の構築が重要視されているが,NST長期継続の有用性を示した報告は少ない.そこで,LCに対する栄養療法,特に管理栄養士による介入や多職種による取り組みが生命予後を改善させるかを解析した.【方法】検討1:栄養士による食事指導を受けていないLC 101例,栄養指導が施行された133例の生存率をKaplan-Meier法で比較した.後者には,1~3か月毎に管理栄養士による体組成,栄養摂取量のモニタリングが行われた.検討2:NST(肝臓病教室)の有用性を検討する目的で,検討1で栄養指導を受けたLC患者を,栄養士による栄養指導に加え,3~6か月毎に施行されている肝臓病教室に定期受講した51例,肝臓病教室未受講の82例に分類し,生存率を比較した.肝臓病教室では,栄養療法の講義(医師),治療食やLES食の調理,試食(栄養士),服薬指導(薬剤師),日常生活のアドバイス(看護師)が行われた.【結果】検討1:栄養指導未施行群,栄養指導定期受診群の観察期間は1132日,926日であり,この間に34例,20例の死亡が認められ,両群の間に有意差(p<0.05)がみられた.この予後改善効果はChild Aで顕著で,Child B+Cでは差はなかった.検討2:肝臓病教室未受講群,教室受講群の観察期間は802日,1145日であり,この間に15例,4例の死亡が認められ,両群の間に有意差(p<0.05)がみられた.【結論】NSTの介入は医師単独による栄養治療を凌駕しており,NST栄養治療システムの構築が,LCの生命予後の改善に繋がる.しかし,NST受講群に治療意欲が高い患者が多く含まれていた可能性があり,今後,いかに受講者を増やすかが課題である.
索引用語 肝硬変, NST