セッション情報 ワークショップ13(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

NST活動の現状と問題点

タイトル 外W13-9:

経腸栄養の交差感染への寄与の可能性とその対策~病棟内の多剤耐性アシネトバクター感染例を通して~

演者 石井 賢二郎(慶應義塾大・一般消化器外科)
共同演者 竹内 裕也(慶應義塾大・一般消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大・一般消化器外科)
抄録 (背景)高度侵襲を伴う手術でのNSTの重要性は増しており,中でも経腸栄養による積極的な栄養管理に関してはその有用性が注目されている.しかし経腸栄養に関連する交差感染も認めることもあり,その対策も重要である.今回,外科病棟において発生した多剤耐性アシネトバクター感染(MDRA)3例が全て経腸栄養を用いており,それに対し施行した対策を含めて報告する.(対象)2010年12月~2011年1月の間に外科病棟で検出された3例(食道癌根治術2例・膵頭十二指腸切除術1例)を対象とした.(対策)この3例は時期も近く同じ病棟内発生であり,交差感染が強く疑われた.3例とも術中に作成した空腸瘻から術後早期(術当日~1POD)から成分栄養剤(エレンタール)を開始していた.そのため経腸栄養からの交差感染も強く疑い,経腸栄養に使用するボトルやライン類の消毒・留置場所などを再検討し,徹底的に管理するようにした.対策前は,経腸栄養ボトルは通常の洗浄方法であり,置き場所は一カ所,ライン・食注シリンジは一日1本使い回しとしていたが,経腸栄養ボトルだけでなく,ライン類も含め,洗浄はピューラッ クスで徹底的に行うようにし,ラインや食注シリンジは一回毎に替え,かつ留置場所も区別し,個室の患者の場合は個室内で洗浄・留置するようにし,留置場所の消毒もピューラックスで徹底した.また,人の手による交差感染を最小限とするため,経腸栄養剤は病棟で移行不要の物をなるべく用いるようにした.(エレンタールに関してはエレンタールボトルを採用とし,ボトルの状態で病棟に上がってくるように変更)この対策以降,経腸栄養施行中の患者でのMDRAを含めた多剤耐性菌交差感染は明らかには認めていない.(結語)高度侵襲手術での経腸栄養の有用性は高いが,その交差感染対策に関してはNSTと院内感染対策チームとの連携も必要である.
索引用語 経腸栄養, 交差感染