セッション情報 |
ワークショップ13(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)
NST活動の現状と問題点
|
タイトル |
消W13-10:認知症患者に対するNST介入の成績と課題
|
演者 |
前田 憲男(倉敷平成病院・消化器科DELIMITER岡山県認知症疾患医療センター) |
共同演者 |
吉岡 毅(倉敷平成病院・消化器科DELIMITER岡山県認知症疾患医療センター), 井上 和彦(川崎医大・総合臨床医学) |
抄録 |
【目的】老年人口の急速な増加にともない,わが国の認知症患者は300万人以上と推計される.認知症は摂食・嚥下障害を伴うことも多く,栄養管理に難渋する例が少なくない.認知症入院患者に対するNST(栄養サポートチーム)の介入効果を非認知症患者と比較し,問題点を明らかにする.【方法】対象は2012年のNST対象(血清Albumin3g/dl以下,栄養評価法CONUT中リスク以上)420症例.平均年齢82.9歳.食事の種類,経口摂取への移行,補食の有効性,食事摂取量,Albumin値について,認知症の有/無2群間をNST介入前後で比較した.【成績】MMSE23点以下/抗認知症薬を服用中/傷病名より269名(64%)が認知症群であり,NST介入前のBMI, Albumin値について非認知症群との間に差を認めなかった.認知症群では非認知症群に比し嚥下/ミキサー/きざみ食の割合が高く(35%/20%),軟菜/常食が低い傾向がみられた(21%/38%).2群ともNST介入前のPNは25%,介入後のENは33%で同等であった.NST介入後,経口摂取が可能となった割合に差はなかったが(5.6%/5.3%),併存疾患や病状の進行で経口摂取不能となった患者は認知症群に多くみられた(4.5%/2.6%).軽度認知症群(MMSE16~23)では重度群より食種形態が改善する例が多く,悪化する例が少なかった.認知症群では,全量摂取できる患者が少ない傾向にあったが(19%/27%),補食の有効例が多くみられた (23%/16%).NST介入にも拘らず,認知症群ではAlbumin2.5g/dl以下の割合が36%と不変で(非認知症群では36%から32%へ減),2.0g/dl以下の高度栄養不良が6%から10%へ増加した.【結論】認知症患者では,非認知症患者に比しNST介入の効果が限定的と考えられたが,補食の有用性も示唆された.NST介入により認知機能の改善,合併症の減少,生命予後の改善,入院期間の短縮や医療費の削減につながるのか,認知症の病型により差があるのか,今後検討を要する.なお,認知症患者の多い亜急性期・回復期リハビリ病棟ではNST加算ができない現状は課題として残る. |
索引用語 |
認知症, NST |