抄録 |
【目的】膵・胆道癌に対する術前ドレナージの現状と問題点について検討する.【対象と方法】2012年12月までに術前ドレナージを施行した悪性胆道狭窄185例中, PDを施行した113例(PD群:男82, 女31, 年齢中央値69歳, 膵癌45, 乳頭部癌17, 胆管癌44, 胆嚢癌7)と肝葉切除を施行した35例(肝切群:男28, 女7, 年齢中央値67歳, 肝内胆管癌8, 胆管癌23, 胆嚢癌4, Bismuth:1/2/3/4, 4/9/7/15)を対象とした.ドレナージ法は中下部狭窄ではEBSを基本とし, 胆管炎併発や肝側進展度診断が必要な例はENBDとし, 精査後EBSとする. 肝門部狭窄では残肝側ドレナージと詳細な胆管造影による進展度診断目的にENBDを基本としている. 検討項目は1)ドレナージ前状態と胆管炎の有無 2)初回ドレナージ法 3)初回留置後の偶発症 4)ドレナージ後の胆管炎 5)最終ドレナージ法 6)手術待機期間と減黄効果.【結果】1)PD群では平均T-Bil値6.5mg/dl(0.3-43.1)で, 黄疸(T-Bil≧3.0)は62%(70/113)にみられた. 胆管炎合併は35%(25/113). 肝切群では平均T-Bil値5.8mg/dl(0.4-17.2), 黄疸は66%(23/35)であり, 胆管炎合併は認めなかった. 2)初回ドレナージ法はPD群 EBS 77, ENBD 36. 肝切群 ENBD 29, EBS 5(前医4), PTBD 1. 3)偶発症はPD群5%(6/113)で膵炎6(中等症2,軽症4). 肝切群14%(5/35)で胆管炎2, 膵炎3(軽症). 4)ドレナージ後胆管炎はPD群19%(22/113), 肝切群49%(17/35)であり肝切群で高頻度(p<0.05). 内訳はPD群ではEBS(ENBDからEBS変更を含む)留置中20%(21/106), ENBD留置中14%(1/7). 一方, 肝切群ではENBD留置中33%(5/15), EBS留置中63%(12/19)であった. 5)最終ドレナージ法はPD群 EBS 92, ENBD 19, PTBD 2. 肝切群 ENBD 24, EBS 5, PTBD 6. 6)待機期間はPD群19日(4-46), 肝切群43日(8-68)で肝切群はPTPEを74%(26/35)に施行. 術前T-Bil値<3.0はPD群85%(96/113), 肝切群94%(33/35). 【結論】ドレナージ後の胆管炎はPD群19%, 肝切群49%と高頻度であり, 特にEBS留置による逆行性胆管炎が問題である. 逆行性胆管炎を防ぐステント開発が必要である. |