抄録 |
【背景】肝門部胆管癌に対する胆道ドレナージは未だ標準化されていない.【目的】当科の片葉ドレナージの妥当性を検討する.【strategy】1. US,CT,MRIにて癌の局在や血管浸潤,遠隔転移の有無を評価し,切除予定例には残存予定肝を,非切除例には肝容量・肝転移巣の局在からドレナージ肝を決める.2.胆道ドレナージは,ERC,IDUS,胆管生検にて質的診断,水平進展度診断を行い,引き続きENBDにて片葉ドレナージを行う.3.切除可能例は減黄後(門脈塞栓術後)肝葉切除を行う.非切除例は減黄確認後ENBD留置枝へ金属ステント(MS)を留置する.4.胆管炎併発,減黄不良に対する追加ドレナージは経乳頭的に試みる.困難な場合は経皮的ドレナージを追加する.【対象と方法】対象は,1997年から2012年に当科及び関連施設にて上記strategyにてドレナージを施行した肝門部胆管癌 194例(切除例 93例,非切除例 101例).検討項目は,切除例は追加ドレナージ施行率,非切除例は開存期間・両葉ドレナージ移行率・追加ドレナージの内訳.【結果】切除例:肝葉切除までにドレナージ枝の追加を要したのは30例(32%)で,胆管炎10例,術式変更9例,減黄不良14例(重複あり)であった(特にBismuthIVで48%(11/23)と高率であった).22例は経乳頭的な追加ドレナージで対応可能であったが,8例(9%)はPTBDを要した.非切除例:ステント閉塞を52例(52%)で認め,50%累積開存期間は234日であった.追加ドレナージは,52例中48例(92%)に延べ119回試み,経乳頭的にstent in stentでMS 53回,プラスチックステント 53回,胆管内洗浄 6回であり,PTBDは 5回で,2回でいずれの追加ドレナージもできなかった.初回閉塞時のドレナージに限ると48例中36例(75%)でMS留置しえた.また,経過中9例(9%)で非ドレナージ区域枝の胆管炎にて両葉ドレナージを要したが,6例は経乳頭的に対応可能であった.他,急性胆嚢炎を4例に認めた.【結論】肝門部胆管癌に対する片葉ドレナージは切除の有無に関わらず効率的かつ経乳頭的追加ドレナージも高率に可能であり妥当と考える. |