セッション情報 ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績

タイトル 肝W15-1:

難治性腹水に対するTIPSの治療成績2013

演者 福田 健(日本医大・消化器内科)
共同演者 楢原 義之(日本医大・消化器内科), 金沢 秀典(日本医大・消化器内科)
抄録 【目的】TIPSにより治療した難治性腹水例の成績を解析し,我々の提唱した適応基準を検証する.【対象と方法】1995年から2013年までに難治性腹水を適応としてTIPSを行った82例を対象とした.男58例,女24例,年齢60±10歳,Child-Pughスコア9.7±1.4点,T-Bil.1.6±1.6mg/dl,クレアチニン1.19±0.45mg/dlであった.TIPSは通常の方法とした.我々は2007年から適応をより厳格とした難治性腹水に対する新適応基準(Child-Pughスコア10点以下,総ビリルビン3mg/dl未満,クレアチニン2mg/dl未満)を提唱している.この基準により選択された症例(n=54)の成績についても検討した.【成績】TIPSにより門脈-下大静脈圧較差(PSG)は20.9±4.7mmHgから8.9±3.9mmHgへ低下した.66例(80%)でPSGが12mmHg未満まで低下するhemodynamic response(HR)が得られ,この群の予後は良好であった.生存かつ腹水穿刺不要をclinical response(CLR)とすると1月後では80%,1年後では70%であった.TIPS後死亡退院例が11例存在し(平均生存日数65日),これらには術中偶発症,術後肝不全,感染症が関与していた.術後生存率は1年67%,2年54%,5年29%であった.新適応基準内症例(n=54)の術後生存率は1年79%,2年66%であった.新適応基準内症例におけるHR例は46例(85%)であり,非HR例にくらべ有意に生存率は高率であった.これに対し,新適応基準外症例(n=28)ではHR例は20例(71%)であり,HR例と非HR例の間で生存率に差は見られなかった.新適応基準内症例における1年後のCLR率は84%であった.【結語】術1年後に70%でCLRが得られるTIPSは難治性腹水の治療に極めて有用と思われた.新適応基準を順守すれば1年生存率79%,1年CLR率84%と更に成績の向上が見られた.充分な門脈圧低下が得られたHR例は非HR例にくらべ予後は良好であるが,新適応基準を逸脱した肝腎機能不良例においては,HRが得られても予後の改善は得られなかった.以上から,難治性腹水にTIPSを行うにあたっては,我々の新適応基準内の症例を選び,HRを得ることが肝要と思われた.
索引用語 難治性腹水, TIPS