セッション情報 |
ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績
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タイトル |
消W15-2:血行動態に基づいた孤立性胃静脈瘤の治療戦略
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演者 |
今井 幸紀(埼玉医大・消化器内科・肝臓内科) |
共同演者 |
菅原 通子(埼玉医大・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大・消化器内科・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】孤立性胃静脈瘤の緊急止血にはシアノアクリレートによる内視鏡的治療が,待期・予防的治療にはバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)が有用である.血行動態に基づいて,これらを組み合わせた治療戦略を考案し,その妥当性を検証した.【方法】対象は2006年1月から2013年2月に治療適応があった孤立性胃静脈瘤94例(男:女=49:45)で,出血例は38例,予防例は56例.肝予備能(Child-Pugh)はgrade Aが36例,Bが48例,Cが10例.出血例の緊急止血には75% α-cyanoacrylate monomer(CA)による内視鏡的止血術を行い,その後CTで胃腎短絡路が確認できた症例に対してはB-RTOを追加,これが存在しない場合とB-RTO不成功例ではEOとCAによるEISを追加した.肝予備能がgrade C例では,grade Bに改善するまで追加治療を実施しなかった.予防例ではCTで胃腎短絡路があれば全例にB-RTOを実施した.胃腎短絡路がない場合でも,アプローチ可能な排血路が確認できた場合は,マイクロバルーンカテーテルを用いたB-RTOを施行した.【成績】出血例のうち,入院時までに自然止血が確認されない32例に内視鏡的止血術を行い,全例で止血が得られた.出血例と予防例を合わせて87例でB-RTOを実施した.これらのうち5例は胃腎短絡路がなかったが,全症例における成功率は96.6%であった.出血例のうち胃腎短絡路がない3例とB-RTO が不成功であった2例にEISを追加した.以上の治療体系で,観察期間(中央値23ヶ月)中に胃静脈瘤からの出血はなく,B-RTO成功例では胃静脈瘤の再発を認めていない.1年および3年生存率は出血例で88.1%と82.9%,予防例も含む全症例では87.2%と70.1%であった.【結論】孤立性胃静脈瘤の破裂例ではCA注入による内視鏡的止血の成績が良好であった.CTとB-RTVの所見に基づいてB-RTOまたはEISを追加することで,胃静脈瘤の再出血を根絶することが可能であり,出血例の予後も良好であった.また,予防例も含めてB-RTO成功例では胃静脈瘤の再発はなく,血行動態に基づいた治療戦略は妥当であると考えられた. |
索引用語 |
胃静脈瘤, B-RTO |