セッション情報 ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績

タイトル 肝W15-3:

非代償性肝硬変における合併症:胃静脈瘤の臨床的特徴と治療経過について

演者 近藤 孝行(千葉大・消化器内科)
共同演者 丸山 紀史(千葉大・消化器内科), 横須賀 收(千葉大・消化器内科)
抄録 【目的】胃静脈瘤は,肝硬変において注意すべき合併症である.塞栓効果に優れたB-RTOが普及してきたものの,肝機能不良例における治療適応や長期効果については議論もある.今回,胃静脈瘤の臨床像や治療経過を肝重症度別に検討し,非代償性肝硬変における胃静脈瘤診療のあり方を考察した.【方法】対象は,B-RTOによって塞栓が得られた孤立性胃静脈瘤合併肝硬変104例(63.1±9.5歳,男62女42)である.肝重症度は代償性群(46; Child A),非代償性群(58; B 54, C 4)で,23例に内科的にコントロール可能なHCCの合併を認めた.B-RTOは既報に準じた手法で行われ,治療前後で超音波ドプラによる門脈血行動態の評価を行った.【成績】1. 臨床背景と肝血行動態:背景因子や流入路・排血路パターン,径,流速,流量について,両群で有意差はなかった.しかし塞栓前の肝静脈圧較差(mmH2O)は,代償性群(152.8±76.3)に比べ非代償性群(200.7±68.5,p=0.0317 )で有意に高値であった.塞栓に伴った圧変化量,変化率,および門脈・脾静脈逆流の頻度に両群で有意差はなかった.2. 治療後経過:B-RTOの短期的合併症には両群で差を認めなかったが,一年内のイベントを総括すると,非代償性群では血栓性合併症を高率に認めた(2.2% vs.13.8%,p=0.0419).しかし1年後の肝機能増悪(Child score+2点以上の変化)や食道静脈瘤増悪率,累積生存率(観察期間中央値36.9ヶ月)には両群間で有意差を認めなかった.一方非代償性群では,治療前の門脈血流が順流であった例(1年94.7%,5年58.1%,9年37.4%)に比べ,逆流例(1年75.0%,5年33.9%,9年22.6%; p=0.007)において累積生存率が有意に低率であった.【結語】非代償性肝硬変における胃静脈瘤は高度の門亢症を背景に有し,B-RTO後の血栓性合併症を高率に認めることから,周術期における血行動態管理の重要性が示された.また非代償性例で門脈逆流を認めた場合,B-RTO後の予後が不良であり,予防治療の適応に関しては慎重に検討されるべきである.
索引用語 胃静脈瘤, B-RTO