セッション情報 ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績

タイトル 消W15-9:

門脈圧亢進による汎血球減少対する腹腔鏡下脾臓摘出術の成績

演者 瀧藤 克也(和歌山県立医大・2外科)
共同演者 上野 昌樹(和歌山県立医大・2外科), 山上 裕機(和歌山県立医大・2外科)
抄録 2001年より脾腫による脾機能亢進症93例に対し,血小板の上昇とC型肝硬変に対するインターフェロン(IFN)療法の導入を目的に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行したので,その成績について報告する.【成績】術前肝機能はChild-Pugh Aが56例,Child-Pugh Bが37例,Child-Pugh Scoreは6.2±1.1で,手術時間は141±52分,術中出血量は269±404ml,摘出脾重量は520±274 gであった.術後在院日数は7.2±2.7日で,術後出血を1例,結腸の熱損傷による穿孔を1例認め,再手術を要したが手術関連死はなかった.血小板数は術前4.8±1.5x10/μlから術後1ヵ月で16.9±7.1x10/μlと正常値に復し(p<0.01),IFN治療が可能となった.またPTは術前75.1±12.2%から術後1ヵ月で81.0±13.1%に(p<0.05),血清T-Bilは1.3±0.54mg/dlから0.98±0.37mg/dlに(p<0.01)有意に改善した.食道静脈瘤は70例に認め,18例(25.7%)で改善した.しかし,48例(68.6%)は変化なく,4例(5.7%)で悪化した.肝機能別に評価すると,摘出脾重量は,Child-Pugh Bが663±310 g とChild-Pugh Aの420±200 gに比して(p<0.05)有意に大きかったが,手術時間および出血量に有意な差はなかった.血小板数も術前Child-Pugh Bは4.3±1.7x10/μl,Child-Pugh Aは5.0±1.4x10/μl,術後1ヵ月では,16.6±7.1x10/μlおよび16.6±7.2x10/μlと有意な差はなかった.術後在院日数もそれぞれ7.4±2.5日および6.7±2.8日とほぼ同等であった.門脈血栓症(脾静脈を除く)を7例(7.5%)認めたが,抗凝固薬投与で全例消失した.C型肝硬変症77例のうち,悪性腫瘍の化学療法目的など9例を除く68例のうち,63例(92.6%)にIFN療法を導入できた.【結論】腹腔鏡下脾臓摘出術は側副血行を伴った脾機能亢進症例でも安全に施行でき,術後1ヵ月には肝機能は有意に改善し,血小板数は正常化した.また,IFNの導入率は92.6%と良好で,C型肝硬変症例に対するインターフェロン(IFN)療法の導入を目的とした本法は有用な手段である.
索引用語 門脈圧亢進症, 腹腔鏡下脾臓摘出術