セッション情報 ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績

タイトル 肝W15-10:

肝臓への血小板集積は, 肝硬変における脾摘の効果に関与するか

演者 近藤 礼一郎(久留米大・病理学DELIMITER久留米大病院・腫瘍センターDELIMITER久留米大病院・病院病理部)
共同演者 鹿毛 政義(久留米大病院・腫瘍センターDELIMITER久留米大病院・病院病理部), 矢野 博久(久留米大・病理学)
抄録 【目的】我々は, 肝臓への血小板集積は慢性肝炎における末梢血血小板減少の1つの要因であると報告してきた. 本研究では, 肝硬変において, 肝臓への血小板集積が, 末梢血血小板数の改善を含む脾摘の効果に関与するかを検討する.【方法】当院で末梢血血小板減少合併肝細胞癌のため, 一期的に肝切除と脾摘をされた肝硬変症例12例 (C型肝炎: 9例, B型肝炎: 1例, 自己免疫性肝炎: 1例, 非アルコール性脂肪性肝炎: 1例) を対象とした. 対象は男性 3例, 女性 9例, 年齢 61 ± 9歳, 術前末梢血血小板数 5.9 ± 1.5 ×104 /mm3であった. 全症例の肝組織, 脾組織に対してCD41とTGF-β1の免疫染色を行い, 血小板と巨核球, TGF-β1の発現を組織学的に検討した. また, 組織における血小板面積とTGF-β1陽性面積を画像解析ソフト (Win ROOF 6.1) を用いて測定した. 結果は術前および術後3ヵ月の血液検査所見と併せ検討した. 【成績】肝組織では, 血小板が炎症の目立つ門脈域の限界板や門脈域周囲の類洞内に目立ち, 全症例で巨核球は認めなかった. 脾組織では, 血小板がびまん性に脾洞内に見られ, 9症例 (75%)に巨核球を認めた. 肝臓内と脾臓内の血小板面積には負の相関がみられ(p = 0.03), 術前ALT値が基準値より高い症例は基準値内の症例に比べ, 肝臓に多くの血小板を認め(15217±8058μm2 vs. 8745±5970μm2), 脾臓には少なく(50652±22250μm2 vs. 69203±16033μm2), 脾摘後に末梢血血小板数の改善が乏しい傾向にあった. また, 脾洞内の巨核球にTGF-β1の発現を認め, TGF-β1陽性面積は, 巨核球を伴う脾組織において, 巨核球を伴わない脾組織より有意に増加した (p < 0.01). いずれの症例も, 術後に末梢血血小板数, 白血球数, 総ビリルビン値に改善がみられた. 【結論】肝硬変症例では, 肝臓内の壊死炎症反応が肝脾組織への血小板集積に関与し, 脾摘による効果にも寄与する可能性がある.
索引用語 肝硬変, 脾臓