セッション情報 ワークショップ15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-治療法の選択とその成績

タイトル 消W15-11:

門脈圧亢進症に対する病態に応じた低侵襲性を追求した外科治療戦略について

演者 児島 亨(岡山済生会総合病院・外科DELIMITER岡山済生会総合病院・肝臓病センター)
共同演者 仁熊 健文(岡山済生会総合病院・外科DELIMITER岡山済生会総合病院・肝臓病センター), 三村 哲重(岡山済生会総合病院・外科DELIMITER岡山済生会総合病院・肝臓病センター)
抄録 【目的】近年の内視鏡治療や腹腔鏡手術の発展,手術器具の進歩により,門脈圧亢進症に対する外科手術術式や適応に変化が生じてきていると考えられる.当院で施行された手術症例の検討をハッサブ手術,遠位脾腎静脈シャント術,腹腔鏡下脾摘術を中心に行い,門脈圧亢進症に対する外科治療戦略について考察を加える.【対象】1995年7月から2013年2月までに行われたハッサブ手術48例(A群)と遠位脾腎静脈シャント術12例(B群),腹腔鏡下脾摘術26例(C群)を対象とした.【結果】A群は年齢57.4±10.7歳,術前Child-Pugh score 6.27±1.18点.B群はそれぞれ56.6±12.2歳, 6.85±1.46点,C群は61.1±8.6歳,6.46±1.42点で3群間でそれぞれ有意差はなかった.術後の食道静脈瘤の状態はA群でF0 5例 F1 20例 F2 2例F3 1例 不明19例,B群でF0 7例 F1 1例 不明5例.B群では術後に内視鏡的追加治療を要した症例はなかった.A群の手術時間は204±63.0分,出血量は864±698mlに対し,B群ではそれぞれ357±86.9分,1725±1137ml,C群は186±56.6分,306±450mlでB群で手術時間がA,C群と比較し有意に長く,出血量はC群,A群,B群の順に有意差をもって多くなっていた.術後在院日数はA群19.3±10.4日,B群26.8±17.0日,C群12.3±5.7日でA,B群とC群において有意差を認めた.術後合併症はA群でClavien分類grade3以上が4例であったのに対し,B,C群ではgrade3以上の合併症は認めず,脳症を認めた症例もなかった.血小板はA,C群では著明に増加し(A群:術前5.12万→術後22.1万,C群:術前5.04万→術後23.0万),B群では軽度増加した(術前7.48万→術後13.3万).【結論】脾機能亢進症と食道・胃静脈瘤のいずれも治療対象となる症例ではハッサブ手術,脾機能亢進症のみの場合は腹腔鏡下脾摘術,食道・胃静脈瘤の場合は遠位脾腎静脈シャント術が各々の治療効果で優れており,また低侵襲性という面においても優れていると考えられた.
索引用語 門脈圧亢進症, 外科治療