セッション情報 |
ワークショップ16(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
消化器癌に対する幹細胞研究の現状と展望
|
タイトル |
消W16-1:5-フルオロウラシル耐性大腸癌細胞におけるマイクロRNA:mRNA複合体の解析
|
演者 |
棚橋 俊仁(神戸薬科大・医療薬学) |
共同演者 |
黒川 憲(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学), 六反 一仁(徳島大大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・ストレス制御医学) |
抄録 |
【背景と目的】悪性腫瘍の抗癌剤治療では,治療の進展に伴い薬剤耐性を持つ細胞のみが残存し,悪性度がより強くなることが知られている.この薬剤耐性を有する細胞は,その特性から癌幹細胞と見なされているものの,その詳細は明らかではない.我々はゲノムと細胞表現型を介在する制御システムとして,マイクロRNA:mRNA複合体に焦点を当て研究を進めている.5-フルオロウラシル(5-FU)耐性大腸癌細胞におけるこの複合体で,マイクロRNAが制御する遺伝子群を解析し,抗癌剤耐性機構に関わる制御システムの解明を試みた.【方法と結果】2種類の5-FU耐性DLD-1/R細胞とKM12C/R細胞の供与を受けた(大鵬薬品工業).これら耐性大腸癌細胞は5-FU 60μMに曝されても経時的な細胞増殖を示し,とくにDLD-1/R細胞は5-FU存在下でも,細胞周期に全く変化が認められなかった.5-FU添加に伴い変動するマイクロRNAをアレイ(アジレント)により解析した.723種類のマイクロRNAのうち,miR-19bとmiR-21が耐性細胞で最も変動しており,qPCR法で再現を確認した.マイクロRNAが標的とする遺伝子群を同定するため,miR-19bの過剰発現系を構築した.miR-19b過剰発現DLD-1/R細胞で,miR-19b:mRNA複合体をAgo2タンパク質で免疫沈降した.miR-19b:mRNA複合体に含まれるmRNAを,遺伝子発現アレイで網羅的に解析し(RIP-Chip法),66遺伝子を同定した.耐性細胞で特異的に含まれるこれら遺伝子群の機能をインフォマティックス解析(IPA)すると,“細胞周期”が上位に示された.S期を調節するSFPQと転写因子であるMYBL2が,miR-19bと結合し複合体に存在することをqPCR法で再確認した.【考察】アレイとインフォマティックスを駆使して,細胞周期の調節機能を持つSFPQとMYBL2がmiR-19bに制御され,5-FU耐性に関与することが示唆された.マイクロRNA:mRNA複合体による遺伝子制御システムを明らかにし,薬剤耐性癌細胞における新たな知見を見出した. |
索引用語 |
マイクロRNA, 癌幹細胞 |