セッション情報 |
ワークショップ16(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
消化器癌に対する幹細胞研究の現状と展望
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タイトル |
肝W16-2:腸管上皮幹細胞の恒常性を保つCdc42は,大腸癌のWnt pathway及びニッチ形成に必須である
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演者 |
阪森 亮太郎(大阪大大学院・消化器内科学) |
共同演者 |
巽 智秀(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】腸管幹細胞分裂や腸管上皮恒常性,ニッチ形成を制御する分子メカニズムの解明は大腸癌における癌幹細胞の特徴を明らかにする上で重要である.今回我々はsmall GTPaseであるCdc42が腸管上皮幹細胞の恒常性のみならず,Wnt pathwayに関与して腸管腫瘍形成を制御することを明らかとしたので報告する.【方法】腸管幹細胞におけるCdc42の機能解析のために腸管上皮細胞特異的Cdc42ノックアウトマウス(Cdc42L/L; VillinCre),Cdc42ノックアウト幹細胞からの子孫細胞追跡マウス(Cdc42L/L; Lgr5CreER-EGFP-RosaYFP)を用いた.また大腸癌モデルとしてAPC変異マウス(APCmin/+)あるいはβ-cateninドミナントアクティブマウス(Catnblox(ex3)/+; VillinCre)を用い,Cdc42L/+; VillinCreマウスと交配することによりCdc42のWnt pathway及び腫瘍形成に及ぼす影響を検討した.【成績】腸管上皮細胞特異的Cdc42ノックアウトマウスは,細胞極性の崩壊,幹細胞からの分化障害を引き起こした.大腸癌モデルマウスはいずれもCdc42活性の上昇を認め,Cdc42の抑制により腸管腫瘍数は減少し,生存期間の延長が認められた.また大腸癌モデルマウスのvilliに認められるcrypt様領域の形成にCdc42が必要であった.さらに大腸癌モデルマウスの腸管上皮細胞において,Cdc42の抑制によりWntシグナル下流の転写活性や細胞増殖マーカー,Wnt産生に関与するWntlessの発現の低下が認められた.一方,ヒト大腸癌由来細胞株においてWntシグナルによるCdc42の活性化が認められた.【結論】Cdc42とWnt pathwayは大腸癌のニッチを形成する上で相互に関わり合い,Cdc42をターゲットとして大腸癌の増殖が制御されると考えられた. |
索引用語 |
Cdc42, 幹細胞 |