セッション情報 |
ワークショップ16(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)
消化器癌に対する幹細胞研究の現状と展望
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タイトル |
外W16-5:プロテオーム解析を用いた胃癌幹細胞関連蛋白の同定とその臨床的意義
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演者 |
森崎 珠実(大阪市立大大学院・腫瘍外科学) |
共同演者 |
八代 正和(大阪市立大大学院・腫瘍外科学), 平川 弘聖(大阪市立大大学院・腫瘍外科学) |
抄録 |
はじめに:癌幹細胞は腫瘍の発生・転移・再発に関与しているとされ,癌幹細胞関連蛋白や機能が明らかにされつつあるが,胃癌幹細胞に関与する蛋白や臨床的意義の報告は認められない.癌幹細胞はFACSを用いて同定されるside population分画(SP分画)に多く含まれると報告されている.また,癌幹細胞の周囲微小環境には正常幹細胞と同様にニッチ細胞が存在し,癌幹細胞性の維持や転移・再発に関係すると考えられている.今回我々は,胃癌細胞株から癌幹細胞様SP細胞を分離し,ニッチ線維芽細胞がSP細胞及び腫瘍形成能に与える影響を検討した.また,SP細胞をプロテオーム解析により癌幹細胞に関連する蛋白を同定し,臨床的意義を検討した.方法:胃癌細胞2株及びそのSP細胞を用いた.FACSを用いてSP細胞をソーティングし,SP分画率や幹細胞関連遺伝子発現,spheroid形成能,SP分画率におよぼす影響を検討した.それぞれの細胞が発現する蛋白をQSTAR Elite LC-MS/MSを用いて解析した.更に,胃癌標本(300症例)を用い,プロテオーム解析により親株とSP細胞の間で有意差を認めた蛋白の免疫組織学的染色を行い,その臨床病理学的意義を検討した.結果:SP分画は親株がOCUM-12(2.0%)とOCUM-2MD3 (4.8%)であるのに対し,SP細胞はOCUM-12/SP(10.8%)とOCUM-2MD3/SP(12.6%)であった.親株に比べSP細胞に有意に高発現している蛋白が5種同定された.一方,SP細胞で有意に発現低下している蛋白は 10種,SP細胞でのみ発現する蛋白を3種認めた.胃癌300症例を用いた検討で,蛋白の中にはリンパ節転移が有意に高頻度で予後に関連するものもあった.結論:ニッチ線維芽細胞はTGFβによってスキルス胃癌幹細胞の幹細胞性を維持していることが示唆された.胃癌幹細胞に関連する蛋白として18種の蛋白が示唆された.これらの蛋白は胃癌幹細胞の転移能に関与する事が示唆された. |
索引用語 |
癌幹細胞, プロテオーム |