セッション情報 ワークショップ16(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器癌に対する幹細胞研究の現状と展望

タイトル 消W16-7:

ソラフェニブは間葉系癌幹細胞を介した肝細胞癌遠隔転移を抑制する

演者 吉田 真理子(金沢大附属病院・消化器内科)
共同演者 山下 太郎(金沢大附属病院・消化器内科), 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】我々はEpCAMとCD90という2つの異なる肝癌幹細胞マーカーについて解析を行い,CD90陽性癌幹細胞は間葉系細胞の遺伝子発現パターンを有し遠隔転移を誘導することを報告してきた.ソラフェニブは進行肝癌に対し有効性が示されている唯一の分子標的薬であり,VEGFR2,B-Raf,c-Kitなどを標的とする事が報告されているが,ソラフェニブが癌幹細胞に与える影響は不明である.本研究ではソラフェニブがEpCAMおよびCD90陽性癌幹細胞に与える影響について検討を行った.【方法】肝細胞癌の遺伝子蛋白発現は,マイクロアレイ,qRT-PCR,Western blotting,FACSならび免疫組織化学にて解析した.CD90陽性およびEpCAM陽性癌幹細胞は培養細胞および新鮮外科切除標本からMACSにより分離した.MTS assayおよびtime lapse imagingを用いたwound healing assayによりソラフェニブが癌幹細胞の増殖運動に与える影響を検討した.【成績】CD90陽性細胞はEpCAM陽性細胞と比較して有意にc-Kitの遺伝子・蛋白発現量が多く,time-lapse imagingによりcell motilityの亢進も認められた.また,両群におけるソラフェニブ感受性を検討したところ,ソラフェニブ10μM下での細胞生存率がCD90陽性細胞で21.2±4.1% (N = 3),EpCAM陽性細胞で45.2±8.1% (N = 3)であり,CD90陽性細胞はEpCAM陽性細胞に比べ有意に高いソラフェニブ感受性を示した(p=0.005).さらにソラフェニブ投与によりc-Kitリン酸化の抑制,CD90陽性細胞分画の著しい減少が認められた.【結論】肝細胞癌において,遠隔転移を制御するCD90陽性癌幹細胞はc-Kitの発現量が多く高いソラフェニブ感受性が認められた.ソラフェニブはCD90陽性癌幹細胞のc-Kitシグナルを標的とし遠隔転移を制御していることが示唆された.
索引用語 ソラフェニブ, c-kit