セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・消化器外科学会合同)

胃癌に対するロボット手術,内視鏡外科の現況と将来

タイトル W17-基調講演:

手術支援ロボットを費用対効果の視点からみる

演者 松本 純夫(国立東京医療センター・外科)
共同演者
抄録 内視鏡手術は社会復帰の早さで患者の支持を受けているが,二次元のモニター経由の手術は深度感覚の習得に時間がかかるのが問題であった.2006年頃から導入された高画質内視鏡は奥行き感があり手術難易度が下がった.しかし本来の立体感とは別物であった.今回は3D視野を提供する手術支援ロボット,ダビンチと3Dフレキシブル内視鏡を取り上げて現況と将来を論じてみたい. 手術支援ロボット,ダビンチは2000年にFDA承認され,同年日本でも九州大学,慶応大学等に導入され臨床試験機として使用された.しかし薬事承認が遅れ2009年になってようやく承認された.その間,米国では前立腺癌手術では2012年時点で9割の手術がダビンチで施行されている.婦人科でもダビンチ手術の割合が増え,最近は咽頭領域でも手術が試みられるようになっている.消化器外科領域では日本より韓国で導入が早かった.日本では2012年4月に前立腺癌に対する腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術にのみ内視鏡手術用支援機器加算54,200点が認められたが,その他の領域が保険診療できるようにならなければ医療施設側にとっては採算面で厳しい点数である.今後は薬事承認されている消化器外科,婦人科,呼吸器外科領域をどのように保険診療の適応範囲にするかが課題である.日本内視鏡外科学会は各専門学会と協議しながら先進医療Bで承認されるよう努力している.胃癌手術を技術面からみればダビンチは立体視,手ぶれ防止機能に優れており,外科医の負担軽減につながっている.3D内視鏡で見られる手ぶれについては内視鏡医および術者側の二面性があり,通常の腹腔鏡手術では今のところ完全に代替できるまでに至っていないが,血管露出,リンパ節廓清など質的にダビンチに劣らなければ普及すると考えられる.2013年春の時点でダビンチは100台以上が国内で稼働しているが,今後まだ薬事承認されていない超音波凝固切開措置,自動吻合器などが使用できるようになれば利便性が高まると思われる.
索引用語 手術支援ロボット, 3D