セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・消化器外科学会合同)

胃癌に対するロボット手術,内視鏡外科の現況と将来

タイトル 外W17-2:

がん専門施設における腹腔鏡下胃切除の導入過程

演者 木下 敬弘(国立がん研究センター東病院・上腹部外科)
共同演者 後藤田 直人(国立がん研究センター東病院・上腹部外科), 芝崎 秀儒(国立がん研究センター東病院・上腹部外科)
抄録 当院は年間約300例の胃癌手術症例を有している.2010年8月までは全例開腹の方針であったが,演者が赴任した同年9月から腹腔鏡手術を導入,現在は約70%の症例を腹腔鏡で手術を行ない,次のステップとして手術支援ロボット導入に向けて準備段階に入っている.当院におけるこれまでの導入過程を呈示する.【導入準備】ナースを含めたチーム参加型トレーニングラボコースに参加し術式に対する理解を深めた.また術式ごとのマニュアルを作製し専用器械セットを準備した.【導入初期・教育】まずは鏡視下手術における一般的な術野展開の基本・デバイスの使用法など基本事項を徹底した.またレジデントにはドライボックスを用いたタスクを与え,ある一定の達成目標を設けた.導入初期は臨床手術をほぼ全例,音声解説付き動画で保存した.動画ライブラリーを何時でも見返せるようにし模範的手技をコピーすることを目標とさせた.上達には個人差があることを考慮し,助手を一定レベルで行えると判断した外科医に執刀の機会を与えた.【コスト面の工夫】当初より鏡視下再建を基本としたためステープラーにコストがかかる問題点があったが,その他のデバイスでコスト削減の工夫を行い運用している.クリニカルパスは術後7-8日目退院で統一した.【結果】現在はLDGからLTG+S D2郭清まで行なっている.適応はcT3N0-1までとしている.導入後2年6ヶ月で350例(LDG 257, LPPG 8, LTG 30, LPG 55)の腹腔鏡下胃切除を行なった.Mortalityは0%であった.LDGにおける手術時間は205±35分,出血量10±34g,郭清LN個数32(14-60),grade II以上の合併症は12%(創感染1.1%, 縫合不全0.5%, 膵液漏1.1%, 腹腔内膿瘍4.0%),術後在院日数は8日であった.問題とされる手術時間に関しても開腹手術と大きな差はなく,現在は直列2件で手術を組んでいる.JSES技術認定医に1名合格,さらに2名が申請中である.【ロボット手術の導入予定】次のステップとして泌尿器・大腸・食道・胃・肝胆膵外科が中心となり準備委員会を発足し準備を進めている.
索引用語 胃癌, 腹腔鏡下手術