セッション情報 ワークショップ17(消化器病学会・消化器外科学会合同)

胃癌に対するロボット手術,内視鏡外科の現況と将来

タイトル 外W17-8:

胃癌に対するロボット手術の導入と現状

演者 齊藤 博昭(鳥取大・病態制御外科)
共同演者 若月 俊郎(鳥取大・病態制御外科), 池口 正英(鳥取大・病態制御外科)
抄録 【目的】2009年11月に厚生労働省の薬事審議会が手術支援ロボットda Vinci Sの使用を消化器外科領域などにおいて許可し,当院には2010年8月に導入された.その後,当科では2011年1月より早期胃癌を対象とした幽門側胃切除症例に対してda Vinci Sの使用を開始し,これまでに計17 例の手術を行ってきた.そこでこれまでの経験を踏まえて,da Vinci Sを用いた胃癌手術の導入および現状と問題点について検討を行った.【成績】1.導入に際しては胃癌で内視鏡外科技術認定医を取得している医師2名と手術部の看護師2名の計4名でチークを作成し,INTUTIVE SURGICAL社が定める所定のトレーニングを行ってCertificationを取得した後に1例目を行った.この間に約6ヶ月を要した.2.平均手術時間は590.2±133分で,同時期にLADGを施行した症例の349.1±67.5分と比較して有意に手術時間の延長が認められた(p<0.0001).一方でda Vinciを施行した症例を前半と後半に分けて手術時間を比較したところ,前半が687.8±44.9分,後半が518.8±133.9分で後半に有意な手術時間の短縮が認められた(p=0.04).3.平均出血量はda Vinciで113.5±97.6mlで,LADG 55.4±59.7mlと比較して有意に多く認められた(p=0.02).前半と後半では差は認められなかった.4.平均在院日数および総リンパ節郭清個数にはda VinciとLADGとの間に差は認められず,さらに前半と後半との間にも差は認められなかった.5.術後合併症は2例に膵液瘻を認めたが,いずれも保存的に軽快した.【結論】da Vinci Sを使用した幽門側胃切除術は通常の腹腔鏡補助下幽門側胃切除術と比較して手術時間の著明な延長が認められた.一方で,在院日数の延長や合併症の増加はなく,また郭清リンパ節個数にも差が認められなかったことから適切なステップを経て導入すれば安全に手術が施行可能と考えられた.今後,手技を定型化させることにより手術時間の短縮は可能であると考えている.
索引用語 ロボット手術, 胃癌