抄録 |
(背景)内視鏡手術支援ロボットは,関節機能,手振れ防止機能,拡大視を伴う三次元モニターによる鮮明なハイビジョン画像等,従来の鏡視下手術の欠点を補完する特長を複数有する.(目的)胃癌に対するロボット支援胃切除術の安全性,有用性について腹腔鏡下胃切除術との比較検討を行った.(方法)2009年~2012年に当科にて手術適応となった胃癌患者全例を対象とし,自費診療による手術支援ロボット(da Vinci S HD)使用に同意した患者をロボット群,同意しなかった患者を従来法群に割付け,術後1か月間臨床経過を観察した.(結果)ロボット群は105例,従来法群は479例であった.患者背景は年齢(ロボット群 vs. 従来法群: 64.0 [29.0-89.0] vs. 68.0 [33.0-92.0], p<0.001)以外に有意差を認めなかった.ロボット群では手術時間(ロボット群 vs. 従来法群: 388 [200-858] m vs. 359 [147-779] m, p<0.001)が延長したものの,合併症発症率(Clavien-Dindo分類 Grade≧III,ロボット群 vs. 従来法群: 1.9% vs. 10.6%, p=0.005),術後在院日数(ロボット群 vs. 従来法群: 14.0 [2-44] d vs. 15.0 [3-136] d, p=0.005)は有意に減少した.合併症の内訳は,ロボット群で局所合併症(Clavien-Dindo分類 Grade≧III,ロボット群 vs. 従来法群: 1.0% vs. 10.0%, p=0.002)が有意に減少したが,全身合併症(Clavien-Dindo分類 Grade≧III,ロボット群 vs. 従来法群: 1.0% vs. 2.7%, p=0.47)は2群間に有意差を認めなかった.(結語)胃癌に対するロボット支援胃切除は腹腔鏡下胃切除に比べて手術時間は延長するものの,局所合併症を軽減し短期術後経過を改善し得る有望な手技である可能性が示唆された. |