セッション情報 ワークショップ18(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

治療困難病変に対する胃ESDの実際,工夫 ≪ビデオ≫

タイトル 内W18-6追:

残胃のESD -特に縫合線上の病変について-

演者 木村 礼子(京都府立医大・消化器内科)
共同演者 土肥 統(京都府立医大・消化器内科), 八木 信明(京都府立医大・消化器内科)
抄録 【背景】早期胃癌に対するESDは標準治療として広く普及している.しかし残胃の病変は現在もなおESD困難病変である.術後残胃は手術となると残胃全摘術となるため,術後のQOLを考えると可能であれば内視鏡治療が望まれる.【目的】残胃のESDにおける問題点を明らかにし,対処法と治療成績について検討する.また,解剖学的特徴にも言及する.【方法】当院で施行された胃ESDの内,2008~2012年の599症例において,残胃と非残胃の治療成績の比較を(1)GL病変,(2)線維化あり(UL+;残胃では縫合線・吻合線上もしくは近傍で線維化)の病変に分けて行った.また,残胃症例の注意点や治療の手順について動画を提示する.【結果】非残胃GL / UL+:347 / 80病変,残胃GL / UL+:4 / 4病変であった.(1)非残胃GL病変の平均施行時間は78分,一括切除率は99%,偶発症率4%で,残胃GL病変の平均施行時間は117分,一括切除率100%,偶発症率0%であり,残胃で治療時間が長かった. (2)非残胃UL+病変の平均施行時間は143分,一括切除率100%,偶発症率9%で,残胃UL+症例の平均施行時間は128分,一括切除率は100%,偶発症率は25%(穿孔1例)と,非残胃と遜色ない結果であった.残胃ESDでの問題点は,蠕動運動が弱く食物残渣が残りやすいこと,内腔が狭く変形していること,吻合部や縫合線による瘢痕やステイプルがあり処置が困難であることなどがある.縫合部は外反縫合,内反縫合などの縫合方法の違いによりステイプルと粘膜,筋層との位置関係が異なり,剥離深度により穿孔のリスクを認識することが重要である.当科ではIT2ナイフにフラッシュナイフを併用することで安全かつ確実な切除が可能であった.【結語】残胃におけるESD治療成績は受容できるが,残胃ESDには特に縫合線・吻合線などにより治療に難渋することもあり,十分に経験を積んだ内視鏡医が施行する必要がある.
索引用語 胃ESD, 胃縫合線上ESD