セッション情報 ワークショップ18(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

治療困難病変に対する胃ESDの実際,工夫 ≪ビデオ≫

タイトル 内W18-11:

近接困難部位に対するクリップフラップ法の有用性

演者 山本 克己(市立豊中病院・消化器内科)
共同演者 林 史郎(市立豊中病院・消化器内科), 市場 誠(市立豊中病院・消化器内科)
抄録 【目的】胃ESDの困難病変のうち,比較的よく遭遇する病変として体部小弯から前壁側の近接困難病変があげられる.近接困難の場合,切除部位の視認性が悪くなり,呼吸性変動などの影響を受けやすく,ナイフや処置具を正確にコントロールすることが難しくなる.特に,ある程度剥離を行い,mucosal flapの下にフードが潜り込めるようになるまではその傾向が強い.我々は,mucosal flapが形成されるまでの間,クリップをmucosal flapの代用として利用するクリップフラップ法を考案した(Endoscopy, 2012).胃腫瘍64例に対して,クリップフラップ法を用いてESDを施行し,検討したので報告する.【方法】腫瘍の手前側の粘膜切開を行い,deeper cutを行った後,腫瘍側の粘膜を1個から複数個のクリップで把持した.把持したクリップの下側に,フードで潜り込むことにより,切除すべき粘膜下層の視野を確保した.デバイスはFlushKnifeBTまたはITKnife2を使用した.【成績】平均腫瘍径15.5mm,平均切除径34.7mm,平均切除時間46分,一括切除術率は100%で,穿孔や多量出血など重篤な合併症は認められなかった.体部小弯から前壁側を含み,近接困難の傾向を認めた症例は26例あり,クリップフラップ法を施行し剥離を完遂できたが,5例ではファイバー交換を必要とした.把持したクリップの下側にフードが潜り込めた後は,フードの上端がクリップで支えられることにより,呼吸性変動が抑えられた.クリップフラップ法なしでは近接困難な場合でも,病変に近接した状態で,より接線方向からのアプローチが可能であった.粘膜下層の視認性が確保された状態で剥離を行うことができ,出血した場合でも止血処置が容易であった.また,体部小弯側では,把持したクリップの尾側が自然に大弯側に垂れ下がるため,比較的容易にクリップの下側に潜り込むことができた.【結語】クリップフラップ法は,簡便に施行でき,体部小弯から前壁側の近接困難例に対し,早期に試みるべき選択肢の一つとなりうると考えられた.
索引用語 endoscopic submucosal dissection, クリップフラップ法